2012.01.23 (Mon)
昭和の雑誌『グロテスク』を大正に
http://netcity.or.jp/OTAKU/okada/library/books/otakusemi/No12.html
http://megalodon.jp/2012-0122-2159-22/netcity.or.jp/OTAKU/okada/library/books/otakusemi/No12.html唐沢 歴史をひもとくと、日本では大正一〇~一五年にかけてもこういう
変態セックスが流行っています。たとえば今回資料として持ってきたのは
これ、大正一五年頃の『ぐろてすく』という、日本で初めて大々的に売れた
変態エロ雑誌。エロではあるんですけど猟奇性も全面に打ち出した構成
になっていて、目次を見ると「世界残虐刑罰史」とか「支の泥棒市場」とか
「近世詐欺捕物講」とか、犯罪系の企画がブームであったということが
うかがえますね。この頃の時代は変態と猟奇の全盛期だったんですけれ
ども、日本がだんだん戦争へと向かっていって、変態どころじゃなくなって
しまったんです。日本史上最大の抑圧時代ですね。その抑圧が一気に
弾けたのが第二次大戦後なんですよ。カストリ雑誌というのが流行り出し
まして、これはズバリ猟奇がテーマです。軍国主義の抑圧から解放され
て、変なセックスへの欲求が吹き出したんですね。ちょっと後の方の時期
ですけど、ここに昭和二八年発行の『風俗草子』という本がありますんで
見てみましょうか。
岡田 あ、見ます見ます。
唐沢 怪奇幻想っぽいテイストで、頭から終わりまでアブノーマルな特集
ばかりです。これ見てもらえますか?(巻頭カラーイラストを開く)いきなり
女が縛られてますよね。これを描いてる中川彩子って人がほんといい味
出してるんですよ。トンデモ系のSMばかりでして、はるか雲の彼方まで
届くような高ーい柱に女が磔≦はりつけ≧になってるとか(笑)。もっと
すごい作品だと、デパートが並んでてその屋上のすべてに、アドバルーン
にくくりつけられた裸の女が浮かんでるとかいうのがあって、そういうわけ
わかんないのをいっぱい描いてる人です。この女の人は(笑)。
岡田 こっちの特集は、これ、SM指導ですか?
唐沢 「異性六態」ですね。このお爺さんは伊藤晴雨という、日本の責め
縛り絵の 第一人者です。陵辱の構図とかいって、「これ、こうするのじゃ」
なんて指導してるんですが、いい表情でしょう、このお爺ちゃんがまた(笑)。
×大正一五年頃の『ぐろてすく』 ○昭和四年の『グロテスク』
×「世界残虐刑罰史」 ○「世界惨虐刑罰史」
×「支の泥棒市場」 ○「支那の泥棒市場」
×「近世詐欺捕物講」 ○「近世詐欺捕物考」
×『風俗草子』 ○『風俗草紙』
×「異性六態」 ○「陵辱の構図」 (中川彩子「犠牲六態」との混同)
2ちゃんねるのスレでの検証してくださった人の書いたこと (Read More 参照) とほぼ同じ
ことを書いているだけだけど……。
「ぐろてすく 雑誌」でググると、「もしかして:グロテスク 雑誌」と表示され、『グロテスク
(GROTESQUE)』という「何度も発禁処分を受け」た雑誌についての情報が、ズラズラと
検索結果に表示される。
http://ja.wikipedia.org/wiki/梅原北明
>彼の業績の中でよく知られたものとして、1928年(昭和3年)11月から1931年(昭和
>6年)8月まで何度も発禁処分を受けながらも出版をつづけた雑誌『グロテスク
>(GROTESQUE)』(全21冊)があげられる。当局の弾圧をかわすためグロテスク社、
>文藝市場社、談奇館書局など数回にわたり発行所の変更を余儀なくされた。
http://ameblo.jp/mandara/entry-10081763436.html
>復刻する雑誌は、あの梅原北明が携わった『グロテスク(GROTESQUE)』(全21冊)で
>ある。この雑誌は昭和3年11月から6年8月まで、何度も発禁処分を受けながらも、グロ
>テスク社、文藝市場社、談奇館書局などと当局の弾圧をかわすために発行所をかえな
>がら、出版し続けたことで知られている。
で、すぐ上に引用したブログには、「昭和4年11月発行、文芸市場社五周年記念特集号、
第二巻 第十一号」の表紙も引用されていて、そこには「ぐろてすく」 (「くすてろぐ」と
書くべきか) という文字が見える。
(画像: http://ameblo.jp/mandara/image-10081763436-10054571665.html )
実は http://www001.upp.so-net.ne.jp/yokai/b-grotesque.htm に「グロテスク」全号の
表紙をアップしている人がいて、平仮名の「ぐろてすく」の文字が確認できるのは、この
「昭和4年11月発行」の号、一冊のみ。唐沢俊一が東大に持ち込んだのは、この本だっ
たと思われる。昭和 3 年創刊の雑誌で、「大正一五年頃」というのはないだろう。
その他参考 URL:
- http://kanwa.jp/xxbungaku/Publisher/Senzen/Hokumei/Hokumei.htm
追記:
>「世界惨虐刑罰史」「近世詐欺捕物考」の連載は昭和四年三月号で終っていますし、
>「支那の泥棒市場」は昭和四年三月号の単発記事ですので、東大に持ち込んだのは
>昭和四年三月号ではないでしょうか?
との指摘がコメント欄にあり。「ぐろてすく」になったのは……唐沢俊一は 2 冊所持して
いたのかも。
で、「世界残虐刑罰史」の方はまあ、以下のページでも「世界残虐刑罰史」となっている。
http://www001.upp.so-net.ne.jp/yokai/page_thumb39.htm
>世界残虐刑罰史・・・才田禮門
しかし、同ページからリンクされている「新年増大号チラシ」の画像:
http://www001.upp.so-net.ne.jp/yokai/grotesque-c0001.htm
を見ると、2ちゃんねるのスレに書き込んだ人の言う通り「世界惨虐刑罰史」になっている
ようなので、こちらを優先させてもらおうかと。
「支の泥棒市場」とか「近世詐欺捕物講」の方は……日本語になっていないというか、
もしも唐沢俊一の書いた通りだとしたら、雑誌に酷い誤植があったということになりかね
ないような。
「近世詐欺捕物講」の方は、下記のページも2ちゃんねるのスレへの書き込みも「近世詐
欺捕物考」だったけど、前述の「新年増大号チラシ」の画像では「近世詐欺捕物帳」と
書かれているようなので、「○近世詐欺捕物帳」というようにさせていただいた (が、コメ
ント欄の指摘にならって「○近世詐欺捕物考」に訂正)。
http://www001.upp.so-net.ne.jp/yokai/page_thumb41.htm
>・近世詐欺捕物考・・烏山朝太郎
「支の泥棒市場」は、
正解は何かの裏が取りきれなかった……。
次に、「風俗草子」の件だが、「中川彩子 風俗草子」でググったら、「もしかして:」の表示
さえもされなくて、ただ淡々と (?) 「風俗草紙」と書いてあるページのみが検索結果に表示
されたりする。
http://smpedia.com/index.php?title=中川彩子
>絵師。シュールリアリズムの画家として名を成した藤野一友の変名。風俗草紙から
>登場。奇譚クラブには描いていない。拷問画が特徴。春川光彦の変名で裏窓に小説も
>書いている。漢文学者の藤野岩友を父に持つ。
http://blogs.yahoo.co.jp/miya1728/54563862.html
>★「風俗草紙」(昭和28年12月15日発行)より、 中川彩子「灼熱の虐なみ」
唐沢俊一が、「いきなり女が縛られてますよね。これを描いてる中川彩子って人がほんと
いい味出してるんですよ」といっているのは、上の引用にある「灼熱の虐なみ」というのを
多分さしているのだろう。
ちなみに、「わけわかんないのをいっぱい描いてる人です。この女の人は」との記述に
関して唐沢俊一は、5 年後の 2002 年の裏モノ日記に、「そこで私が中川彩子を“この
女の人“と言っているようになっていること。あちゃあ。〈略〉単行本でも見逃していたのは
不覚。これでは私が中川彩子マニアでございなどと主張しても面目まるつぶれである。
岡田さん、ここ、訂正しといてくれないかしら。」――などと書いている。「岡田さん」が訂正
してくれなかったこの件については、前に「『受験で上京したばかりの高校生』が SM 緊縛
画集にハマった様子」のエントリーでも言及したことがある。
それはさておき、中川彩子が登場する「昭和28年12月15日発行」の「風俗草紙」には、
「異性六態」……ではなく、喜多玲子の「犠牲六態」というのが載っているというのは、
2ちゃんねるのスレで指摘していた人の書いていた通り。
http://smpedia.com/index.php?title=喜多玲子
>喜多玲子「犠牲六態」 風俗草紙 1953年(昭和28年)12月号より
これについては、該当ページの画像も
http://smpedia.com/index.php?title=ファイル:Suma24.jpg
で見ることができたりする。
で、唐沢俊一も「陵辱の構図とかいって」と書いているが、「異性六態」ならぬ「犠牲六態」
の方がイラストであるのに対し、『凌辱の構図』はグラビアの写真記事だったようだ。
http://blog.livedoor.jp/mrkinbakusyashin/tag/風俗草紙
>12-02) 風俗草紙 12 53年12月号グラビア『凌辱の構図』のアングル違いです。
この号の伊藤晴雨は、『明治の無惨繪』や『国周ゑがく女の責め場』というのを書いて
いたみたいだけど、それに加えて「グラビア『凌辱の構図 指導する伊藤晴雨画伯』」
――と、グラビアの指導も担当していた模様。
http://smpedia.com/index.php?title=伊藤晴雨
>伊藤晴雨『明治の無惨繪』風俗草紙1953年(昭和28年)12月号, グラビア
>伊藤晴雨『国周ゑがく女の責め場』秘蔵版風俗草紙1953年(昭和28年)12月号増刊号,
>p148
http://blog.livedoor.jp/taiyoyaro/archives/51774828.html
>風俗草紙 昭和28年12月号
〈略〉
>グラビア「凌辱の構図 指導する伊藤晴雨画伯」
その他参考:
http://smpedia.com/index.php?title=風俗草紙
>1953年(昭和28年)9月、 p29 『女体の縛り方一五種』では伊藤晴雨が縛り方を図入り
>で解説。美濃村の縛りも口絵で紹介。上田青柿郎も出ている。
>1953年(昭和28年)12月、臨時増刊号として『秘蔵版 風俗草紙』
追記: コメント欄で指摘いただいて (ありがとうございました) から、日数が経ってしまい
非常に申し訳なかったですが、やっと修正。(_ _);
目次の画像はコピーしたので、下のサムネイルをクリックすれば参照できます。

More...
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/books/1326721519/297--------
297 :無名草子さん:2012/01/20(金) 23:51:03.61
『東大オタク学講座』1997年9月26日版
http://netcity.or.jp/OTAKU/okada/library/books/otakusemi/No12.html
>唐沢 歴史をひもとくと、日本では大正一〇~一五年にかけてもこういう
>変態セックスが流行っています。たとえば今回資料として持ってきたのはこれ、
>大正一五年頃の『ぐろてすく』という、日本で初めて大々的に売れた変態エロ雑誌。
>エロではあるんですけど猟奇性も全面に打ち出した構成になっていて、目次を見ると
>「世界残虐刑罰史」とか「支の泥棒市場」とか「近世詐欺捕物講」とか、犯罪系の
>企画がブームであったということがうかがえますね。この頃の時代は変態と猟奇の
>全盛期だったんですけれども、日本がだんだん戦争へと向かっていって、変態どころ
>じゃなくなってしまったんです。日本史上最大の抑圧時代ですね。その抑圧が一気に
>弾けたのが第二次大戦後なんですよ。カストリ雑誌というのが流行り出しまして、
>これはズバリ猟奇がテーマです。軍国主義の抑圧から解放されて、変なセックスへの
>欲求が吹き出したんですね。ちょっと後の方の時期ですけど、ここに昭和二八年発行の
>『風俗草子』という本がありますんで見てみましょうか。
× 大正一五年頃の『ぐろてすく』
○ 昭和四年の『グロテスク』
(雑誌『グロテスク』(文藝市場社)は昭和三年十月創刊。唐沢が参照しているのは
昭和三年三月號と思われる)
× 「世界残虐刑罰史」
○ 「世界惨虐刑罰史」
× 「支の泥棒市場」
○ 「支那の泥棒市場」
× 「近世詐欺捕物講」
○ 「近世詐術捕物考」
× 『風俗草子』
○ 『風俗草紙』
298 :無名草子さん:2012/01/21(土) 00:30:04.97
唐沢 「異性六態」ですね。このお爺さんは伊藤晴雨という、日本の責め縛り絵の
第一人者です。陵辱の構図とかいって、「これ、こうするのじゃ」なんて指導
してるんですが、いい表情でしょう、このお爺ちゃんがまた(笑)。
× 「異性六態」
○ 「陵辱の構圖」
唐沢が参照しているのは『風俗草紙』昭和28年12月号。
唐沢は“「異性六態」ですね”と言っているが、それは伊藤晴雨「陵辱の構圖」直前の
ページに掲載されている喜多玲子のイラスト。伊藤晴雨とは無関係だし、タイトルは
「異性六態」ではなく「犠牲六態」である。
ちなみに『風俗草紙』は『奇譚クラブ』などとは違い、性的マイノリティーを単なる
異常者扱いして好奇の目で取り上げているため、濡木痴夢男氏などから強く批判されている。
330 :↓気になったので、いちおう正確な文章に修正してみた。:2012/01/22(日) 10:03:21.35
『東大オタク学講座』1997年9月26日版
http://netcity.or.jp/OTAKU/okada/library/books/otakusemi/No12.html
>唐沢 歴史をひもとくと、日本では大正一〇~一五年にかけてもこういう
>変態セックスが流行っています。たとえば今回資料として持ってきたのはこれ、
>大正一五年頃の『ぐろてすく』という、日本で初めて大々的に売れた変態エロ雑誌。
>エロではあるんですけど猟奇性も全面に打ち出した構成になっていて、目次を見ると
>「世界残虐刑罰史」とか「支の泥棒市場」とか「近世詐欺捕物講」とか、犯罪系の
>企画がブームであったということがうかがえますね。この頃の時代は変態と猟奇の
>全盛期だったんですけれども、日本がだんだん戦争へと向かっていって、変態どころ
>じゃなくなってしまったんです。日本史上最大の抑圧時代ですね。その抑圧が一気に
>弾けたのが第二次大戦後なんですよ。カストリ雑誌というのが流行り出しまして、
>これはズバリ猟奇がテーマです。軍国主義の抑圧から解放されて、変なセックスへの
>欲求が吹き出したんですね。ちょっと後の方の時期ですけど、ここに昭和二八年発行の
>『風俗草子』という本がありますんで見てみましょうか。
× 大正一五年頃の『ぐろてすく』
○ 昭和四年の『グロテスク』
(雑誌『グロテスク』(文藝市場社)は昭和三年十月創刊。唐沢が参照しているのは
昭和四年三月號と思われる)
× 「世界残虐刑罰史」
○ 「世界惨虐刑罰史」
× 「支の泥棒市場」
○ 「支那の泥棒市場」
× 「近世詐欺捕物講」
○ 「近世詐術捕物考」
× 『風俗草子』
○ 『風俗草紙』
331 :↓気になったので、いちおう正確な文章に修正してみた。:2012/01/22(日) 10:04:52.13
>唐沢 「異性六態」ですね。このお爺さんは伊藤晴雨という、日本の責め縛り絵の
>第一人者です。陵辱の構図とかいって、「これ、こうするのじゃ」なんて指導
>してるんですが、いい表情でしょう、このお爺ちゃんがまた(笑)。
× 「異性六態」
○ 「陵辱の構圖」
唐沢が参照しているのは『風俗草紙』昭和28年12月号。
唐沢は“「異性六態」ですね”と言っているが、それは伊藤晴雨「陵辱の構圖」直前の
ページに掲載されている喜多玲子のイラスト。伊藤晴雨とは無関係だし、タイトルは
「異性六態」ではなく「犠牲六態」である。
ちなみに『風俗草紙』は先輩誌『奇譚クラブ』などとは違い、性的マイノリティーを単なる
異常者扱いして好奇の目で取り上げているため、濡木痴夢男氏などから強く批判されている。
-------
目次と本文で表記の食い違いはありません。
他の号(昭和四年新年号 含)での表記も同様です。
「新年増大号チラシ」にある“捕物帳”は誤植と思われます。
http://www.ps5.net/up/download/1327277248.jpg
>平仮名の「ぐろてすく」の文字が確認できるのは、この
>「昭和4年11月発行」の号、一冊のみ。唐沢俊一が東大に持ち込んだのは、この本だっ
>たと思われる。
「世界惨虐刑罰史」「近世詐欺捕物考」の連載は昭和四年三月号で終っていますし、「支那の泥棒市場」は昭和四年三月号の単発記事ですので、東大に持ち込んだのは昭和四年三月号ではないでしょうか?
言葉遣いの時代背景考えると「支那」かそれに関する名称(北支とか)
っぽいですね…
画像も見ました & 保存しました。
時間ができ次第、訂正しようと思います。
(ちょっと今別件でバタバタしてまして……すみません) (_ _);