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2010.12.25 (Sat)

本当は女性言葉ではない“そうかしら”“違うのよ”

http://www.tobunken.com/news/news20101223114447.html

イベント
2010年12月23日投稿
別格だった男 【訃報 野沢那智】
〈略〉
野沢那智は、声優ブーム以前に“出待ち”がついた、日本でもたぶん
最初の声優だった。……とはいえ、それはまだ日本人が吹き替えという
文化に慣れていない時代、『0011/ナポレオン・ソロ』の、
イリヤ・クリヤキンのファンの子たちで、録音スタジオから出て
きた野沢那智を見てその子たちは一斉にがっかりした声で
「なぁんだ、イリヤと全然違うわ」
と叫んで、それ以来、野沢氏は人気スターの吹き替えの後は裏口から
帰るようになったという。

ちなみに、イリヤも、『悟空の大冒険』の三蔵法師も、いわゆる
“オカマしゃべり”であるが、当時の子供である私には何ら違和感
なく、“こういう大人、いるいる”と受け止めていた。いや、
オカマが身の回りにいたわけではなく、親戚などで、どちらかと
言えば上品な、教養ある紳士で、イントネーションは男なのに、
使う言葉は“そうかしら”“違うのよ”といった女性言葉、と
いう人がたくさんいた。そういう、上流のしゃべり言葉文化と
いうものが戦後の一時期に存在したのだ。だから、女性言葉を軽々と
使いこなす野沢那智の吹き替えを聞いて、
「この人はいい生まれの人なんじゃないか」
と直感したこともあった。後から調べたら氏の父親は作家の
陸(くが)直次郎で、当たらずといえども遠からず、というところだった。


ד出待ち” ○“追っかけ”

上に引用した文章は、「パクリ+ガセ=あなた」に引用した文章の続き。

「その子たちは一斉にがっかりした声で『なぁんだ、イリヤと全然違うわ』と叫んで」
とかいうのは多分ガセ。何しろ野沢那智本人が、以下のように語っているのだから。

http://seigura.com/senior/road/road_detail/tabid/73/pdid/nozawa-2-02/Default.aspx
>『0011ナポレオン・ソロ』のイリヤ役をやることになって、びっくりしたことがありまし
>た。収録を始めて4週目くらいだったかな。スタジオの周囲に女性ファンが、数え切れ
>ないくらいいるんですよ。今では考えられないことですが、スタッフがスタジオの中に
>までファンを入れちゃったりしてね。当時は声だけの仕事は半人前の日陰者みたい
>に扱われていたのに、いきなり握手とサイン責めの日々ですから、みんなうれしかっ
>たんでしょうね。


「スタッフがスタジオの中にまでファンを入れちゃったりしてね」となると、もう“出待ち”
ではない。『とり・みきの映画吹替王』の中で、野沢那智本人が、「それが追っかけの
出た最初だって先輩たちに言われましたけど」と表現しているのだが、「オンエアされる
前に1週間でも早くフィルムを観たいと思われる方もいらっしゃったと思うんですが」との
ことだから、本気でスタジオの中に入れてあげていたのだろう。

『とり・みきの映画吹替王』 P.140
>とり 野沢さんといえば、世紀の二枚目専門俳優……。

>野沢 って、それがいちばん困るんですよ。どんな奴が出てくるかと思うじゃないです
>か(笑)。いちばん苦手なのがね、「じゃあご紹介しましょう。アラン・ドロン[*1]の吹替
>でお馴染みの野沢那智さんです」って。待ってる人はどんな人が出てくるんだろうって
>思うじゃないですか。そこへ出て行く身にもなってくださいよ(笑)。

>とり (笑)。僕は野沢さんの声を最初に意識したのは、『0011ナポレオン・ソロ』の
>イリヤ、デヴィッド・マッカラム[*2]なんですよ。当時、イリヤ役のマッカラムもすごい
>人気でしたけど、野沢さんの人気もすごかったと記憶してるんですが。

>野沢 いやいや。

>とり ものの本によると追っかけがいたとか。

>野沢 スタジオはすごかったですね。行くともう見学者の方、今で言う追っかけの方
>がね。まあオンエアされる前に1週間でも早くフィルムを観たいと思われる方もいらっ
>しゃったと思うんですが、とにかくすごい数の人がいたんですよ。びっくりしちゃって。
>僕らは「まあ吹替やればいいんだ」くらいの意識しかありませんでしたから。それが
>追っかけの出た最初だって先輩たちに言われましたけど。


唐沢俊一の書いている「それ以来、野沢氏は人気スターの吹き替えの後は裏口から
帰るようになったという」とは大違いな話が、野沢那智によって語られている。

というか、唐沢俊一の“追討”って、当時のファンを無根拠に貶めるだけのものでは
ないかなあ……。多分、唐沢俊一的には、面白くて笑える話にアレンジしたつもりなん
だろうけど。

で、「上流のしゃべり言葉文化というものが戦後の一時期に存在」……って、自分の
親戚をためらうことなく「上流」ということにしますか問題については、「藤岡真blog」の
徹底検証 唐沢俊一追討日記 その36 野沢那智」でさんざん突っ込まれているし、
それを受けての2ちゃんねるのスレでは「まず自分の親戚を『上品な、教養ある紳士』
『いい生まれの人』としているのが笑止千万」とかいわれている (前エントリーRead
More
参照) ので、自分としては、江戸川乱歩の小説に出てくる小林少年も、「かしら」
とか使っていなかったかしら、というのみにとどめる。


そして、唐沢俊一の的外れ親戚自慢はともかく、「“オカマしゃべり”」について。
Wikipedia の中の関連しそうな記述は、以下の通り。

http://ja.wikipedia.org/wiki/野沢那智
>1年半アフレコの仕事をこなし、借金が半分になったため、そろそろ役者を辞めようと
>思い始めた。その時、「最後にこのオーディションに行くだけ行ってきてよ。ほとんど
>キャストは決まっているので、落ちるから大丈夫」と言われて紹介されたのが『0011
>ナポレオン・ソロ』であった。気楽にオーディションを受けたが、既にイリヤ・クリヤキン
>(デヴィッド・マッカラム)役は愛川欽也に決まっていたのが、何故か配役を野沢に変
>更された[1]。野沢が知人から聞いたところによれば、ディレクターが野沢の出演して
>いる番組を偶然見て「誰だ?この女みたいな芝居する奴は」と注目し、配役を決定した
>という。また、『0011ナポレオン・ソロ』が視聴率40%くらいを取る大当たりになったた
>め、役者をやめるわけにはいかなくなったとのこと[1]。
〈略〉
>本人によれば「狂人が得意分野」とのこと(「キレるのはそう難しくないんです」と語っ
>たこともある[3])。『悟空の大冒険』で担当した三蔵法師がいわゆる「おかま」になっ
>たのはアドリブからである。
〈略〉
>吹き替え草創期の頃は納谷悟朗や田中信夫のように低音が売りの役者が多かった
>ために、本人曰く「低音ブーム」と呼ばれていたという[10]。しかし、『0011ナポレオン
>・ソロ』でイリヤ・クリヤキンに抜擢されたとき、本人はその俳優を見た瞬間「これは
>低音じゃ出来ないよな」と思ったという[10]。どうしたらこれを吹き替えられるか考えた
>ところ、低音の役者と比較的高めの声でとっさに思いついた「あわわ~」という台詞で
>音響監督には「よし、それで行こう。それで決まり」とこの声が認められるが、野沢
>自身は「こんな高めの声、毎週でませんよ」とこの声を出すことの苦悩を語っている
>[10]。しかし、この声で吹き替えたことにより野沢は今までの吹き替えにおいての低
>音のイメージを覆した。
〈略〉
>1. ^ a b c d e f g h i 野沢那智の声優道 第1回 人生何がどうなるかなんてわからない
〈略〉
>3. ^ a b c d e f 『とり・みきの映画吹替王』洋泉社・刊 より
〈略〉
>10. ^ a b c 『報道ステーション』の吹き替え特集より


この Wikipedia の記述は、どう判断するか迷うものであり、「誰だ?この女みたいな芝居
する奴は」というのは、[1] の「野沢那智の声優道 第1回 人生何がどうなるかなんてわ
からない」には見あたらない記述なのが困る……。「三蔵法師がいわゆる『おかま』に
なったのはアドリブからである」というのも、[3] の『とり・みきの映画吹替王』に書かれて
いるのとは違うような。

『とり・みきの映画吹替王』 P.146
>野沢 『悟空の大冒険』 [*26] とかね。

>とり そういえばあの三蔵もオカマっぽい役でしたね(笑)。

>野沢 そうなんですよ(笑)。杉井ギザブロー [*27] というアニメの監督がいるんです
>けど、杉井さんは「オレは野沢那智はオカマの役にしか使わない」って言うんですよ
>(笑)。


で、まあ、『とり・みきの映画吹替王』という本は野沢那智本人にインタビューしている
本であるので、以後はこの本からの引用を主な典拠として書くことにするが、そうすると
いくつかのアニメでの「“オカマしゃべり”」というのは、唐沢俊一のいう「戦後の一時期
に存在」していた「上流のしゃべり言葉文化というもの」とは、また別系統のものという
話になる。

『とり・みきの映画吹替王』 P.141
>とり 矢島正明さんにもお伺いしたんですが、ソロとイリヤがだんだんオカマっぽく
>なっていくじゃないですか。

>野沢 あれは篠原慎さんという翻訳家の方と、滝山照夫ディレクターという名人の
>方がいて、それにプロデューサーの吉川斌[*6]さんも加わって、ただ普通にやった
>だけでは面白くないから工夫しようということになって、おネエ言葉にしちゃったりね。
>やってても面白かったですよ。番組もヒットして36%の視聴率をとりました。でも、それ
>はその3人のスタッフの才覚と、矢島さんや脇をしっかり固めてくれたゲストのベテ
>ランの方たちのおかげなんですよ。



そして、同書の、矢島正明のインタビューは以下の通り。

『とり・みきの映画吹替王』 P.23
>とり その後、外画ではロバート・ヴォーンの『0011ナポレオン・ソロ』[*17]という
>名作がありますが、そのヴォーンとマッカラムのかけ合いはかなりオリジナルから
>変えてやられたというイメージがあるのですが。

>矢島 そうですね。あれは脚本を書いたのが篠原慎さん[*18]という方なんですが、
>「『ナポレオン・ソロ』が始まる前に『バークにまかせろ』[*19]という作品があって、
>それであのスタイルは試みられているんですよ。

>とり ちょっとおネエ言葉っぽいんですよね。

>矢島 今はなんでもないですけど、当時はああいいう口調を男性が使うってことに
>抵抗があった時代ですよね。でもそのほうが洒落た感じや都会的な感じが出るん
>じゃないかと、『バークにまかせろ』で若山弦蔵さんがやられたらひじょうにうまく
>いった。それを篠原さんが『ナポレオン・ソロ』に持ち込んできたんです。僕は困りま
>したね。

>とり どうしてですか?

>矢島 つまり何をやっても若山弦蔵の亜流になってしまうんですよ。脚本が同じ文体
>ですから。結局『バーク』とどう区別するかが僕の中で大きいことだったんですが、
>幸い野沢那智君といういい相棒に恵まれましたんでね、彼絵がどんどん突っ込んで
>くれて。

>とり 吹替史上に残る名コンビですよね。

>矢島 僕はボケに回っていればいいというね。若山さんがバスの声でまとめるところ
>をぼくはもう少し高い声にして「なのよん」って語尾を変えたのがポイントでしたね。
>『ナポレオン・ソロ』が成功したのも、そういう会話の面白さが那智君のおかげで
>うまくいったからでしょうね。


そして、上で話題になっている『バークにまかせろ』について若山弦蔵が語るくだりでは:

『とり・みきの映画吹替王』 P.277
>若山 〈略〉それと、さっき「おネエ言葉」っておっしゃったけど、僕は絶対にそうは
>思ってないんです。「男女共用語」なんです。

>とり たしかに「~かしら」「~なのよ」は男でも言いますね。

>若山 そうなんですよ。それが好評になると、翻訳の篠原慎も台本段階で女性言葉
>で書いてくるんですよ(笑)。でも僕は絶対にそのとおりには言わなかった。

>とり そういわれて、あらためて後期の台本(のコピー)を拝見しますと……ああ、
>たしかに台本に「みっともないわよ」とあるのを「みっともないね」と、若山さんが直し
>てらっしゃるメモ書きがありまうね。

>若山 そうでしょう。女言葉と男女共用語は違うんですよ。最初に「そうねえ、いいじゃ
>ない」ってやったら、演出の左近允[*62](洋)氏が気に入っちゃって。そうしたらもう
>次から篠原氏がそればっかり書いてきて(笑)。


……まあ、この本は実は「『テレビ坊やの冒険』って、まさか植木不等式発のガセでは
ないでしょうね
」のエントリーのときに買った本で、そこのコメント欄にある通り、不自然
に唐沢俊一の名前がちらっと出てくる本でもあるのだ。

せっかく自分の名前が出てくるのだし、そもそも吹替えについての本なのだし、とり・
みきは弟の唐沢なをきとも縁が深いのだし……この『とり・みきの映画吹替王』という
本をちゃんと読んでおけばよかったのに唐沢俊一。

そうしたら、「“そうかしら”“違うのよ”といった女性言葉」とかいう迂闊な書き方を
しないですんだかもしれないのだから。

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