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2010.10.12 (Tue)

アインシュタインの脳を追いかけるだけが能じゃなかった杉元賢治教授

『ウラグラ! ベスト・オブ・裏モノの神様』 P.179 ~ P.181

神● それにしても、その研究チーム、アインシュタインの脳をどうやって
調べたかのう。
唐● あれ、アインシュタインの脳というのは研究機関によって冷凍保存
されているのではなかったでしたっけ?。
神● ……一般にはそう思われているようだが、実は違うのじゃよ。彼の
脳の研究の基礎になっているのはみな、アメリカの病理学者トーマス・
ハーベイが個人的に所持している脳を分けてもらったサンプルに過ぎない
んじゃ。
唐● そのハーベイって人物はどうしてアインシュタインの脳を所持してる
んですか? 生前のアインシュタインと親交でもあったんですかね?
神● いや、アインシュタインが1955年にプリンストン病院で死去したとき
に、病理解剖をしたのがこのハーベイという医者だったのじゃな。実は
アインシュタインは自分の遺体は火葬にしてほしいと生前希望していたし、
彼の娘もそう望んでいたのにもかかわらずこのハーベイは勝手に脳を取り
出し、しかもホルマリン漬けのビン詰めにして私物化してしまったのじゃな。
唐● えらいことをしましたねえ。遺族は何にも言わなかったんですかね。
神● まだその当時は遺体の所有権という考え方が世間に希薄であった
のと、アインシュタインほどの天才の脳を焼却してしまうことに世間が無言
の反対を示したために、あまりとがめられることもなかったようじゃな。
唐● はあ。
神● しかもハーベイは気前のいい男で、世界中の研究機関から求めら
れるたびに、自分の持っている脳を少しずつ、切っては配っていた。遺族の
もとに脳が戻ってしまっては、みんなにアインシュタインの脳は行き渡らなく
なるからな。
唐● 科学者にとっては、やはり遺族より学者仲間のハーベイ博士のもと
にある方がいいんですか。
神● そういうことだな。……実は、日本にも、このハーベイの脳の一部は
あるんじゃな。
唐● ホントですか!
神● 近畿大学の杉元賢治助教授は、自他共に認める“アインシュタインの
脳オタク”だそうで、どうしてもその脳が見たくてたまらず、ハーベイのところ
に脳があると聞いて、あわてて飛んでいったらしい。
唐● 脳萌えだったんですね。
神● それがどれくらい熱のこもったものだったかというと、税関で入国目的
を聞かれて、「アイアム ルッキング フォア アインシュタインズ ブレイン!」
と答えたほどであったという。
唐● 税関も驚いたでしょうねえ。
神● その時のドキュメント映画があるくらいじゃからな。念願かなって杉元
氏はハーベイの家でその脳のビン詰めを見せてもらったそうじゃが、なんか
フォアグラのようなものじゃったということだな。
唐● 見ただけで満足したんですか。
神● まさか。思い切って「少しでいいから分けてくれませんか」と頼むと、
ハーベイは気前よく、マナイタの上にビンから脳を取り出して、包丁で切り
分けてくれたという。
唐● ……ケーキじゃあるまいし。帰国のとき、税関になんて言って通った
んだろうなあ。
----------
唐● しかし、アインシュタインがいかに偉大なる人物であっても、脳の大きさ
には限りがあろう。そんなに気前よく切り分けていって、そのうち脳がなくなっ
てしまわないか、とケチな考えを持つのは私ばかりだろうか。
 お釈迦様の骨を全部集めると釈迦は身長数十メートルの巨人となる勘定
になるそうだが、世界中のアインシュタインの脳を集めると、いったいどれ
くらいの容量になるのか?


×杉元賢治助教授 ○杉元賢治教授

「冷凍保存されているのではなかったでしたっけ?。」の「?。」は原文ママ。

本当はイケメンだったアインシュタイン」のエントリーも、あわせて参照のこと。

で、こちらのエントリーには入手予定と書いた杉元賢治著『大追跡!! アインシュタインの
天才脳』は入手済み。この本を読んでから、あらためて唐沢俊一の文章を読み返すと
突っ込みどころ満載という感じだし、そもそも唐沢俊一はこの本を読んでいない可能性
が高いと思われる。

ともあれ、『大追跡!! アインシュタインの天才脳』は 2001 年 1 月に「第一刷発行」の
本で、表紙には「近畿大学教授 杉元賢治」、まえがきには「近畿大学教職教育部教授
杉元賢治」の文字がある。ドキュメンタリー映画の時点では助教授だったようだが、
『ウラグラ! ベスト・オブ・裏モノの神様』は 2002 年 4 月の発行だから、「助教授」と
なっているのは間違い。

http://ja.wikipedia.org/wiki/アインシュタインの脳
>『アインシュタインの脳』(アインシュタインののう)は、1994年に英国BBCテレビジョン
>が制作したドキュメンタリー映画で、日本では1998年に劇場公開された。オーソドック
>スなドキュメンタリーながら主人公である近畿大学助教授(当時)の杉元賢治を始め、
>登場する面々がとにかく奇人揃いで、とりわけ山形国際ドキュメンタリー映画祭上映で
>は好評を博した。


「“アインシュタインの脳オタク”」とか「脳萌えだった」とか、杉元賢治がアインシュタイン
の脳にしか関心がなかったかのような表現も、ちょっとどうかと思った。「アインシュタイン
をライフワーク」にしていた彼は、脳に関すること以外のアインシュタイン本を何冊か出版
していたし、ドキュメンタリー映画『アインシュタインの脳』を製作したイギリス・BBCが
杉元に最初にコンタクトをとってきた時点では、彼がアインシュタインの脳にも関心が
あることは知らないで、アインシュタインに関する資料等のコレクターとして紹介された
という話なのだ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/杉元賢治
>杉元賢治(すぎもと けんじ、1947年 - 2006年10月19日)は、日本のアインシュタイン
>研究者。近畿大学教職教育部元教授。
〈略〉
>近畿大学教職教育部教授の傍ら、ライフワークとしてアインシュタインの研究を専門と
>し、アインシュタインに関係する膨大な資料、写真、関連グッズを収集する。
〈略〉
>・アインシュタイン博物館(丸善、1994年)
>・アインシュタイン・アドベンチャー素顔にみる真実の生涯(現代数学社、1991年)


『大追跡!! アインシュタインの天才脳』 P.1
> 1992年、枯れ葉散る物寂しい秋のことである。ケビン・ハルと名乗る見知らぬ男
>から、私の研究室にファクスが届いた。「アメリカにおけるアインシュタインの遺産」
>という映画を制作するので協力して欲しいという内容であった。ケビンは、英国BBC
>テレビのプロデューサー兼ディレクターだった。
> アインシュタインが後半生を過ごしたアメリカのプリンストンに下見調査に行った
>ケビンはプリンストン高級研究所で、私の英語の著書 "Albert Einstein:A Photo-
>graphic Biography" を紹介され、そういう目的なら「アインシュタインの熱烈な信奉者
>である日本の杉元を訪ねたらどうか」と言われたという。


それ以外に問題と思われるのは、「遺族は何にも言わなかった」わけではないことや、
「ケチな考えを持つのは私ばかりだろうか」も何も、唐沢俊一が何を根拠に、「ハーベイ
は気前のいい男で、世界中の研究機関から求められるたびに、自分の持っている脳を
少しずつ、切っては配っていた」だの「そんなに気前よく切り分けていって」だの、やたら
気前がいいというハーベイ像を脳内に構築していったのかが、さっぱりわからないこと。

まず、「遺族は何にも言わなかった」わけではなかった件について。

『大追跡!! アインシュタインの天才脳』 P.43 ~ P.44
> 静かに旅立ちたいというアインシュタインの遺言で遺体は8時間以上アイスボックス
>に入れられ、安置されていた。当時、プリンストン・メディカル・センターの病理学長で
>アインシュタインの解剖を担当したトーマス・ハーベイ博士は、秘かにアインシュタイン
>の脳を摘出し隠していたのである。しかし「ニューヨーク・タイムズ」紙がこの特ダネを
>すっぱ抜いた。
> 最終的にはアインシュタインの脳の医学的研究を行い、その成果を専門的な医学
>雑誌に発表するということでアインシュタインの家族とトーマス・ハーベイ博士の間で
>合意がなされた。そしてアインシュタインの脳や、その記事を商業目的で使うことは
>固く禁じられた。このとき、アインシュタインの目も摘出され保存されたと言われる。
> しかし、数年後アインシュタインの脳はトーマス・ハーベイ博士とともに忽然と行方
>不明になってしまうのである。


『大追跡!! アインシュタインの天才脳』 P.81 ~ P.82
> トーマス・ハーベイ博士は、最近プリンストン・メディカル・センターにアインシュタイン
>の脳を戻した。
> エリオット・クラウス博士は著者宛の最近の手紙で次のように述べている。
>「近頃アインシュタインの脳には悪評が漂っていた。アインシュタインの脳は科学的
>研究のためにハーベイ博士が持ち続けた。しかし、ハーベイ博士はアインシュタイン
>の脳を隠し続けるどころか、好奇心のある捜索者に見せびらかしていたのである。
>アインシュタインの家族は、素人向けの雑誌に書いてはならない、商業目的に用い
>てはならない、科学的研究に用いるならばと、アインシュタインの脳の保存を許可した
>のである。アインシュタインの脳は、ハーベイ博士が所有していた長い年月のように、
>再び闇の中に姿を消すことになるでしょう」
> アインシュタインの脳は、今ようやく安住の地に着いたのである。
> 各地を転々としたトーマス・ハーベイ博士は、現在プリンストン郊外に住んでいる。
>ハーベイ博士も、今ようやく安堵の地を得たのである。アインシュタインの脳を所有
>していることに、ハーベイ博士はいつも心に重責を感じていたと思う。


「科学的研究に用いるならば」という遺族の出した条件からすると、唐沢俊一のいう、
「遺族のもとに脳が戻ってしまっては、みんなにアインシュタインの脳は行き渡らなく
なるからな」というのは、必ずしもそうとはいえないことになると思う。

また、唐沢俊一は「そんなに気前よく切り分けていって」と書いているが、『大追跡!! 
アインシュタインの天才脳』に、ハーベイから直接、アインシュタインの脳を入手したと
記述されているのは以下の 4 人のみである。

・「現在91歳でアインシュタインの友人でもあったアインシュタイン医学校名誉教授
 ハリー・ジンマーマン博士」 (P.52)

・「(引用者註: ルーシー・バリアン・ロルク博士の) 恩師のウィリアム・エーリッヒ博士が、
 ハーベイ博士から贈られたものです」 (P.55)

・「アインシュタインの脳を研究したマリアン・ダイアモンド博士(カルフォルニア大学
 バークレー校教授)」 (P.61)

・「アインシュタインのDNAを研究しているチャールズ・ボイド博士」 (P.74)

仮に、実際はこの数倍くらいいると見積もったのだとしても、唐沢俊一のいう「お釈迦様
の骨を全部集めると釈迦は身長数十メートルの巨人となる勘定になるそうだが、世界中
のアインシュタインの脳を集めると、いったいどれくらいの容量になるのか?」とのくだり
は、どういう「勘定」をすればそうなるのか、ちょっとわからない。

同書にはまた、「アインシュタインの脳のコレクション。3つの瓶におさめられている」と
いうキャプションつきの写真も掲載されている (P.80)。「そのうち脳がなくなってしまわ
ないか」という唐沢俊一の心配も、いったいどこからきたものかは謎である。

いやまあ、世界中にある聖遺物をかきあつめると、イエスが磔にされた十字架などは
ありえないほど巨大なものということになってしまうとかそういう話は、唐沢俊一がよく
使い回すネタのパターンなので、今回も強引に話をそっちにもっていっただけかなあと
思わないでもないのだけど。

どちらにしても、「そのうち脳がなくなってしまわないか、とケチな考え」うんぬんは、
唐沢俊一に「気前がいい」ことにされてしまったトーマス・ハーベイが脳を所有し続け
ていることが前提であり、『ウラグラ! ベスト・オブ・裏モノの神様』の出た 2002 年の
時点で、とっくに無用の心配となっていたのであった。何だか間抜けな話である。

あと、気になるのは、「杉元氏はハーベイの家でその脳のビン詰めを見せてもらったそう
じゃが、なんかフォアグラのようなものじゃったということだな」。

この書き方だと、杉元賢治がアインシュタインの脳のことを、「フォアグラのようなもの」と
表現したかのようだが、少なくとも『大追跡!! アインシュタインの天才脳』にはそんなこと
は書かれていない。

ドキュメンタリー映画『アインシュタインの脳』の方には、そのような発言があるのだろう
か……。本に載っているビン詰めの脳の写真は、フォアグラというにはあまりに表面が
凸凹しているように見えるのだけど。表紙にチラリとうつっているのを見ると淡いクリーム
色なので、色は似ているかもしれない。

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