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2010.04.03 (Sat)

その「60年代スイッチ」、誤動作だらけじゃないんですか?

『トンデモ版 ユーチューブのハマり方』 P.90 ~ P.92

60年代の疑似記憶

 私はこの、ユーチューブで懐かしものを探す期間を「あるある段階」と
名付けています(笑)。……ところが、その期間はある一定の体験を
すませることで、卒業してしまうんですね。これは何故かというと、自分
の記憶というものは、まあこれは幼い子供時代ですから当然ですけれ
ども、実に不完全なもので、また範囲も狭い、ということに気が付くから
なんです。そして、今度はその記憶の欠陥を、映像の方でカバーしよう
とし始めるんですね。
 つまり60年代の海外アニメというと「トムとジェリー」しか見たことの
ない人でも、同じ60年代に日本で公開されていた作品をいろいろ資料
から探し出し、それを見ることで、“自分の中の60年代”の拡張をはか
るわけですよ。ノスタルジーの輸血、です。
 たとえばこれ、日本では60年代に地方局中心に放映されていた番組
(邦題は『冒険王クラッチ』)なんですが、悪夢のようなアニメですね。
シンクロヴォックスという方式でして、絵に実写の声優さんの唇を合成
(しかも凄くチープな合成)して、口を動かすセルの費用を浮かす、と
いうものです。タランティーノの「パルプ・フィクション」という映画で、この
アニメを見ているシーンがありましたが、さすがオタクのタランティーノ、
アニメもマニアックなものを持ってきますね。
 私は、シンクロヴォックス作品で、同じカンブリア・スタジオ製作の
「宇宙ライダー・エンゼル(SPACE ANGEL)」の方は見ているんですが、
それより放映が前のこの「冒険王クラッチ」は残念ながら(?)見ていま
せん。しかも、ユーチューブにあるのは原語版です。しかし、この絵の質
といい、動き(ほとんど動いていませんが)といい、そこにあるのは強烈
な、1960年代の香り(製作は1959年)なんですね。見ていないにも
関わらず、ユーチューブで見つけたときに、「ああ、なんて懐かしいん
だ!」と思ってしまった。
 これは後追いの記憶なんですが、その前に、この時代の映像をやたら
見まくっていたせいで、自分の中に、「60年代スイッチ」とでもいうものが
できていて、それを押されると、それが自分の記憶であれそうでないもの
であれ、無差別にノスタルジー感覚が湧き上がってくるようになってしまっ
ているようなんですね。
 疑似記憶、と言ってもいいんでしょうが、ここで大袈裟に言うと、自分の
中の“自我の拡大”です。「自分の過去を愛する」ということから、「過去に
あるものを全て愛する」という感覚になってきているんですね。


本の第 2 章にあたる「2ch ユーチューブは『タイムマシン』である」の前半をしめくくる
文章。

上で引用する文章がくる前に、唐沢俊一は 25 歳の頃に仙台で見た金髪美女のCMを
「青春」の思い出として語り、大学のときにアニドウの上映会に何度となく足を運んで
見たという『トムとジェリー』のノスタルジーについて語っていたわけだが……。

さらにここでも、「幼い子供時代ですから当然」とか書いてくれているから、たまらない。

関連
唐沢俊一 25 歳の青春であった<金髪美女のヌードCM
大学生ってまだまだ子どもですか? にハゲドウならぬアニドウの「呼べど叫べど」

上で引用した以外のどこかにでも、唐沢俊一の「幼い子供時代」の話が出てくるのなら
まだよいのだが、その手の記述はほとんどない。昔の海外アニメの日本語吹替え版の
話をするなら、小学生から高校生にかけて何気なく再放送で見ていたとかいう話になっ
てもよさそうなものだが、そんな話は唐沢俊一の本では語られない。

そのようなチグハグさに加えて、今度は「60年代スイッチ」だの、「疑似記憶」だのが
出てくるので、さらにわけがわからない……。いや、昔の自分が実際に見ていたわけ
でもない動画を見て、ああ懐かしいという「ノスタルジー感覚が湧き上がってくる」という
こと自体はあるとは思う。しかし、なぜ、1940 年代や 1950 年代に製作されたアニメを
原語版で見て、「60年代スイッチ」が作動しなければいけないのかと。

『冒険王クラッチ』は唐沢俊一自身の書いている通り「製作は1959年」のようだし、
「60年代の海外アニメというと『トムとジェリー』しか見たことのない人でも」というが、
唐沢俊一自体がノスタルジーを感じるものとしてあげているのは 1950 年バージョンの
「土曜の夜は」 (Saturday Evening Puss) だったりするし。

http://tondemonai2.blog114.fc2.com/blog-entry-420.html
>『トンデモ版 ユーチューブのハマり方』 P.86
> 昔見たまま、という問題になりますと、たとえば、ある時期(60年代)からアメリカで
>は、〈略〉テレビで一部のトムとジェリーが、制作時のままの形では放映できなくなって
>しまいました。


他に唐沢俊一がタイトルをあげている「赤ちゃんはいいな」にいたっては何と 1943 年の
製作だというし、こちらに引用した「ドルーピーもの」の「呼べど叫べど」は 1955 年。

http://ja.wikipedia.org/wiki/赤ちゃんはいいな
>『赤ちゃんはいいな』(Baby Puss、1943年12月25日)は『トムとジェリー』の作品の
>ひとつ。


http://ja.wikipedia.org/wiki/ドルーピー
>「呼べど叫べど」 (Deputy Droopy 、1955)

自分の個人的体験に結びつけるのなら、『トムとジェリー』をテレビの再放送で見ていた
のは 1970 年代や 1980 年代のことだし、唐沢俊一の個人的体験を優先させるにしても
同書で本人が語っているのはアニドウの上映会――これは 1980 年代以降の話――の
ことなのに、唐沢俊一が 2 歳から 12 歳であった「60年代」と言い張るのは奇妙な話だ
と思う。日本語吹替え版に限定した話なら、まだわかるのだけど……。

つまり、「60年代の海外アニメというと『トムとジェリー』」といわれても困るし、「この時代
の映像をやたら見まくっていたせいで」と唐沢俊一は書いているが、その「この時代」と
やらは、いったいいつの時代のことかさっぱりわからないよ――という話。


で、『冒険王クラッチ』について。 URL などという親切なものは、この本には
いっさい示されていない。P.91 の画面スナップショットのキャプションに「Clutch Cargo
© CambriaProduction」と書いてあるのみ。

Google で「Clutch Cargo」を動画検索するとトップにくるこれ↓を見ても、唐沢俊一の
いうような「凄くチープな合成」の「悪夢のようなアニメ」とまでは思えない。

http://www.youtube.com/watch?v=NGzxLSPRCG0
> thesixtiesguy ― 2007年11月06日 ― part 1 of 5. Clutch, spinner and Paddlefoot
> come to the rescue of a downed pilot in the Alaskan wilderness.


本の画面スナップショットに使用されているらしいのは、YouTube 内を「Clutch Cargo」
で検索するとトップにくるこれ↓。これはまあアップした人が「Who needs drugs when
there's films like this?」とコメントしているくらいだし、ちょっと「悪夢のようなアニメ」に
見えるかもしれない。それでも「凄くチープな合成」といえるかどうかは疑問に思うけど。

http://www.youtube.com/watch?v=pFnLirXjjto
> austinstein ― 2007年08月14日 ― Clutch Cargo- Who needs drugs when there's
> films like this?


どうせなら、ここ↓までいっていれば、文句なしに「凄くチープな合成」といえるのだけど
……。ただ、これは最後に JohnsonBrandEdition.com とクレジットが入っているので、
本家の「カンブリア・スタジオ製作」のものとは異なる模様。

http://www.youtube.com/watch?v=11F3RRcPbFg
> JohnsonBrand2000 ― 2007年03月28日 ― Same old Wuzzup audio, but with
> Clutch Cargo! Dig it.
> Actually this project was part of an assignment that I got from Leo Burnett,
> Budweiser's advertising agency, many moons ago.


ついでに、本の画面スナップショットは、たまたま YouTube にアップされていた「Clutch
Cargo」から取ってきたものでしかないらしく、「タランティーノの『パルプ・フィクション』と
いう映画で、このアニメを見ているシーン」で映っているのが、この回だったというわけで
はないようだ。

Youtube を「Tarantino Pulp Fiction Clutch Cargo」で検索すると、こういうの↓がまず
引っかかる。

http://www.youtube.com/watch?v=c8ktqvNxqZ4
>A spoof of the Christopher Walken Gold Watch monologue from "Pulp Fiction".

では、パロディのネタ元は――と、「Tarantino Pulp Fiction Christopher Walken Gold
Watch monologue」で探してみたら、確かに「Clutch Cargo」らしきアニメを子どもが
見ている場面を発見できた。

http://www.youtube.com/watch?v=vRYBqDDR_HE
http://www.youtube.com/watch?v=IpvtOXHuQTY

……それにしても、これ↑だと、「凄くチープな合成」といわれてもしかたないかも。


さて、そして、唐沢俊一による「シンクロヴォックス」の説明だが、その元ネタと思われる
のが、以下の 2 つの文章。

「日本では60年代に地方局中心に放映されていた番組」、ひいては、「60年代スイッチ」
という発想の元にもなったのではないかと思われる。

http://www.planetcomics.jp/news/watcher/3/index.html
>SSさんからのお便りじゃ。「昔見たアニメのことがずっと気になってます。タイトル等
>わからないですが、アメリカのアニメで、絵は普通のアメコミタッチでしたが口だけが
>実写で、絵と合成してある奇妙なものでした。」

> おっ、懐かしいのう。わしもそれは見ていたぞい。若い人には馴染みがないじゃろう
>が、口だけぐにょぐにょ動いている、何というか不気味なアニメなんじゃ。現在はもちろ
>ん作られてないわけじゃが、口の動きのセルを別に描かなくていい上に、本当にキャ
>ラが喋っているような臨場感を狙っていたというところかのう。チャレンジの国アメリカ
>にはいろんなアニメ技法があるんじゃよ。
> その「口だけ実写」は、シンクロヴォックス(Syncro-Vox)と言われる技術で、50年代
>にカンブリア・スタジオというところで発明され、特許も取得した画期的(?)なもの
>じゃ。その技術を使用した「冒険王クラッチ(CLUCH CARGO)」「宇宙ライダー エンゼ
>ル(SPACE ANGEL)」「キャプテン・ファドム(CAPTAIN FATHOM)」の3本は日本でも
>60年代に放送されていて、SSさんが観ていなさったのも間違いなくこれらじゃろうな。

> てっとりばやくビジュアルが見たいときはここなんかどうじゃろ。
> http://hometown.aol.com/PaulEC1/clutchgallery.html
> ここに「冒険王クラッチ」「宇宙ライダー エンゼル」セル画のスキャンがあるんで、
>見れば思い出す手がかりになると思うがの。
> 「宇宙ライダー エンゼル」の方はコミック・アーティストにしてアニメーター、現在の
>両業界に多大な影響を及ぼしているアレックス・トスのデザインじゃ。カッコいいのう。
>しかし、このアニメはぜんぜんセルが使用されていなくて、パネルを置いてカメラを動
>かすことでアニメにしていたようじゃ。
>  「冒険王クラッチ」はクエンティン・タランティーノの映画「パルプ・フィクション」の中
>でもTVで流れている回想シーンがある。さすがオタクで知られるタランティーノらしいこ
>だわりじゃのう。同世代の人ならわりと思い入れある番組ということの表れとも言える
>かもしれん。


WebArchive に残っている http://hometown.aol.com/PaulEC1/clutchgallery.html
> LUTCH was in production from 1958 through 1960, and showed many parallels to
> the later, and better known, JONNY QUEST, produced by Hanna-Barbera several
> years later.


http://homepage3.nifty.com/wilee921/sakusaku/2_2.htm
> もう1本は、驚異の口だけ本物アニメ「キャプテン・ゼロ(宇宙ライダーエンゼル)」
>Space Angel('62)である。アメリカでは声優の台詞とキャラクターの口の動きが一致
>(リップシンクロという)していないと視聴者に受け入れられないので、製作費の安い
>テレビアニメでも台詞や音楽を先に録音する。リップシンクロ作業の手間を省ければ
>安くアニメができると考えた人間がいて、声優の口を実写で撮影してアニメのキャラク
>ターに合成するというシンクロ・ヴォックスという方式を発明した。合成する場合には動
>きがない方が都合良いので、ほとんど止め絵ばかりであった。アメコミ調の絵はなか
>なかリアルな(そうでないと唇だけが浮いてしまう)スペースオペラだったが、宇宙旅
>行の退屈さが非常によく感じられる作品だった。クエンティン・タランティーノの「パル
>プ・フィクション」では、テレビにこの方式の見たことのないアニメが映っていた。エンド
>タイトルによれば、「冒険王クラッチ」Clutch Cargo('59))。さすがオタクのタランティー
>ノ!と妙な感心をしてしまった。

>(以上、「キネマ旬報別冊 テレビの黄金伝説」掲載、一部修正)


唐沢俊一の文章の中には、上に引用した文章に含まれていない情報は基本的に含ま
れていない。「凄くチープな合成」というのが入って、「口を動かすセルの費用を浮かす」
や「動き(ほとんど動いていませんが)といい」あたりの説明が、ぐっとわかりにくく劣化
しているようだが。

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