2017年09月 / 08月≪ 123456789101112131415161718192021222324252627282930≫10月

--.--.-- (--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告  |  EDIT  |  Top↑

2010.03.07 (Sun)

「裏の国際性を確保」していたのは杉戸光史というより四白眼?

『とても変なまんが』 P.77

 昔、ひばり書房で怪奇ものを描いていた作家に杉戸光史という人がいた。
当時の怪奇貸本作家としては抜群の技術があった人で、少女マンガタッチ
の瀟洒な絵を描いていたが、作品のストーリィによっては少年もののタッチ、
さらにギャグタッチ、と、絵柄を自在に使いわける器用さを見せていた。
同じ少女ものでも、あすなひろし風のバタくさい作風や、石ノ森章太郎っぽ
いファンタジックな作風など、数種類の描き分けがきくのである。


『とても変なまんが』 P.80

 そんなわけで、杉戸光史に関しては僕の記憶の中では少々傍流の方
に片付けられてしまっていたのだが、先日、知合いの編集者のS君がタイ
旅行に行った際、そこの露店であちらの怪奇マンガを、ごっそり買いこん
で、おみやげに持ってきてくれた(こういう人々の協力によって、この連載
は成り立っているのである。感謝!)。
 もちろんタイ語なんかはさっぱりわからないが、怪奇もののストーリィな
ど、絵を見ているだけで大体わかる。大笑いしながら読んでいるうちに、
ふと、どこかで前にこういう作品、読んだことがある、というような既視感覚
に襲われた。
 もちろん、絵柄やストーリィに似たものの記憶はない。第一、こんなヘタ
なマンガ、もし日本にあったら脳天気マンガ評論家の筆者の記憶に残ら
ないわけがないのである。何度も見返しているうちにハッと思い当たった。
このシリーズの表紙である。そのバッド・テイストにあふれた構図、そして
毒々しい色づかい。これは、まさしくひばり書房の描きおろし単行本では
ないか。中でもまさしく杉戸光史の作品に、それは酷似しているのであった。
 タイには現在、日本のマンガが山のように流入し、正式版・海賊版入り
乱れて翻訳・発行されている。ひばりの単行本が果して実際にタイにまで
流れて、これらの怪奇マンガに影響を与えていたのかどうか、それはわか
らない。だが、逆にまったくの平行進化で、怪奇ものの構図や絵柄、色づ
かいというのはどこの国であっても似てしまうものだ、とすれば、そっちの
方がずっと面白い。そして、その構図や色づかいが似たのが、他の作家
ではなく、杉戸光史であったというところが、実になんとなく納得できて、
まことにまことに面白い。まさに杉戸は、通俗に怪奇を描こうとしたものが
たいがいたどりつく、最もポピュラーな感覚を持っていた作家だ、ということ
が言えるのだから。だとすれば杉戸は、無個性を突き抜けて、裏の国際性
を確保していた作家、と言えるかもしれない。


「もちろんタイ語なんかはさっぱりわからないが、怪奇もののストーリィなど、絵を見てい
るだけで大体わかる」――という、いっそさわやかともいえるかもしれない豪快な言い切り
は、「唐沢俊一の担当編集などについての、あまり偏執的ではないリスト」のコメント欄
一部引用した文章を思い出させる。

『唐沢俊一のB級裏モノ探偵団』 P.106

「いやいや、こんな残虐な町にわたしは住めない! 一生おうちの中で、
パパとママと三人だけで暮らすわ!」
と(もちろん、タイ語なんか読めないから、絵から想像して説明しているん
だけど)主人公が家に戻ると、家ではパパもママを絞め殺していました
とさ、という作品。タイコミックにしてはスマートすぎるオチなので、これは
パクリだろう。


『唐沢俊一のB級裏モノ探偵団』 P.108

とにかく、何冊読んでも(いや、タイ語など一字もわからないのだから読む
というより“眺める”と言った方が正確だが)飽きがこない。その夜のホテル
はもちろん、帰りの飛行機の中でも読み続けて、日本まで帰ってきた。


で、まあ、似ている似ていないは主観にも大きく左右されるので、少し迷ったのだが、
唐沢俊一の書いている「中でもまさしく杉戸光史の作品に、それは酷似している」は、
ガセにカウントさせていただきたい。……だって、『とても変なまんが』の P.79 の図を
見ても、似てないんだもん。いくら唐沢俊一に「まことにまことに面白い」といわれても、
である。

だいたい、『とても変なまんが』に引用されている杉戸光史の漫画は、唐沢俊一自身が
書いているように、「少女マンガタッチの瀟洒な絵」だったり、「あすなひろし風のバタくさ
い作風」だったりで、「当時の怪奇貸本作家としては抜群の技術があった人」と書かれて
いるのも素直にうなずけるような、普通でマトモな絵柄なのだ。唐沢俊一はそれを「無個
性」ともいっているが。

それが、唐沢俊一いうところの「絵柄やストーリィに似たものの記憶はない。第一、こんな
ヘタなマンガ、もし日本にあったら脳天気マンガ評論家の筆者の記憶に残らないわけが
ない」ような漫画に「酷似」しているというのでは、理屈にあわないと思う。


ちなみに、P.79 の比較図には、杉戸光史の、『死霊のたたり 双子少女』『妖怪どろ娘』
『人喰い女の館』『呪いの学校にヘビ女』、以上 4 冊の単行本の表紙が並んでいる。
そのうちの 3 冊の画像はネット上で参照できる。

- 『妖怪どろ娘』 http://img08.shop-pro.jp/PA01038/015/product/17555311.jpg

- 『人喰い女の館』 http://www.ni.bekkoame.ne.jp/vintage/manga/k12/k012023.jpg

- 『呪いの学校にヘビ女』
http://www.meiwasyobou.com/catalog/images/products/c1101/noroinogakkounihebionnna.jpg

これらの表紙の左側に、「酷似」しているというタイのコミックスの表紙が並んでいるが、
どれも劇画調で青年誌風だし、どうせなら顔をもっと面長に描く漫画家を探してくれば
よかったのに……と思う。

ただ、今ふと思いついたのだけど、引用されている杉戸光史の漫画の表紙は、女の子
が大きく目を見開いて、三白眼を通り越して四白眼になっている。で、タイの漫画の表紙
の方は、化け物が四白眼っぽくなっているので……唐沢俊一のいう「酷似」とは、この
四白眼が似ているということかもしれない。
スポンサーサイト

テーマ : 感想 - ジャンル : 本・雑誌

00:45  |  その他の雑学本 間違い探し編 (324) +  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://tondemonai2.blog114.fc2.com/tb.php/405-a5e61dfc

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。