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2010.02.11 (Thu)

複数候補の存在する「ノーベル賞最大の汚点と呼ばれた事件」?

『史上最大のムダ知識』 P.80

間違った説でノーベル賞を受賞した人がいる。


『史上最大のムダ知識』 P.81

ノーベル賞最大の汚点と呼ばれた事件、
その影で地道な努力を積み重ねた男がいた。

1926年にノーベル生理学・医学賞を受賞した、デンマークの病理学者ヨハ
ネス・フィビゲルのこと。
 彼はネズミに寄生虫のいるエサを与えると胃がんになりやすいことを発見
し「ガンは寄生虫によって発生する」という学説でノーベル賞を受賞した。
 しかしフィビゲルの死後の研究で、この実験でガンになるネズミは、ごく
まれな種類であることが判明し、この説は覆された。これ以降、ノーベル賞
は、正当性が確実な研究結果にのみ、賞を贈ることになっている。
 フィビゲルと同じ年に、僅差で受賞を逸したのが、東大の山極勝三郎で、
テーマは「コールタールによる皮膚ガンの人口発生」。こちらは正当性が確認
され、ガン研究の大本となった。
 ちなみに、この研究は、ウサギの耳に3年間、ひたすらコールタールを塗り
続けることで確認された。


「この実験でガンになるネズミは、ごくまれな種類であることが判明」したという程度で、
「間違った説」だの「ノーベル賞最大の汚点」だのは言い過ぎではと思った。

で、現在の Wikipedia の記述では、「ガンになるネズミは、ごくまれな種類」という話では
なくて、「ビタミンA欠乏症のラットに線虫が感染した場合にフィビゲルの報告したような
病変がおこる」、そして「悪性腫瘍の像はないことを証明した」ために、「フィビゲルがノー
ベル賞を受賞した寄生虫発癌説は、誤りであったと考えられている」ということになって
いる。これならば、「間違った説でノーベル賞を受賞」とかいうのもわかる。

http://ja.wikipedia.org/wiki/ヨハネス・フィビゲル
>ヨハネス・フィビゲル(Johannes Andreas Grib Fibiger、1867年4月23日-1928年1月
>30日)はデンマークの病理学者。1926年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
〈略〉
>フィビゲルは1907年にネズミの胃癌を比較研究している際、線虫の一種 Spiroptera
> carcinoma を発見した。この線虫はネズミのえさとなっていたゴキブリを宿主として広
>く分布しているものであった。胃に異常が認められないネズミに線虫が寄生したゴキ
>ブリを与えると、高い確率で胃癌を発生することを確認した。フィビゲルは1913年、世
>界で最初に人工的にがんを作り出したことになる。ついでネコに寄生する条虫を用い
>て、ネズミに肝臓肉腫を起こすことにも成功した。
>当時はウィルヒョーの反復刺激説が議論されており、フィビゲルの仕事はウィルヒョー
>説の有力な証拠とされた。しかし1952年アメリカのヒッチコックとベルは、ビタミンA欠
>乏症のラットに線虫が感染した場合にフィビゲルの報告したような病変がおこることを
>報告し、さらにフィビゲルの診断基準に問題があり、フィビゲルが使った標本を見直し
>ても、ヒッチコックら自身の実験の標本でも、悪性腫瘍の像はないことを証明した。
>現在、フィビゲルがノーベル賞を受賞した寄生虫発癌説は、誤りであったと考えられて
>いる。


では、どうして唐沢俊一の文章には、「ごくまれな種類」とか書かれているかというと、
これは多分、『史上最大のムダ知識』が出た 2007 年の時点では、Wikipedia の記述は
以下のようなものであったせい。

http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=ヨハネス・フィビゲル&oldid=11111965
>当時はフィルヒョーの反復刺激説が議論されており、フィビゲルの仕事はフィルヒョー
>説の有力な証拠とされた。後年の研究により、線虫によってがん化するネズミはまれ
>な系統に属するものだけであることが分かっている。


上に引用した時点での Wikipedia の記述には、「現在、フィビゲルがノーベル賞を受賞し
た寄生虫発癌説は、誤りであったと考えられている」とは書かれていないことに注意、
かなあ。

おそらく、当時の唐沢俊一も最新の日本語版 Wikipedia の執筆者も、フィビゲルの説は
誤りと断ずる何らかの資料を元にしているのだろうが、両者とも出典を明記してくれて
いないので、確認がしにくい。ついでにいえば、英語版 Wikipedia の方の、ビタミンA
うんぬんの記述も、「[citation needed]」と要出典タグがついていたりする。

http://en.wikipedia.org/wiki/Johannes_Andreas_Grib_Fibiger
> While studying tuberculosis in lab rats, Fibiger found tumors in some of his rats.
> He discovered that these tumors were associated with parasitic nematode worms
> that had been living in some cockroaches that the rats had eaten. He thought
> that these organisms may have been the cause of the cancer. In fact, the rats
> had been suffering from a vitamin A deficiency and this was the main cause of
> the tumors. The parasites had merely caused the tissue irritation that drove the
> damaged cells into cancer; any tissue irritation could have induced the tumors.
> [citation needed]


まあ、劣化コピー王ともいわれている (?) 唐沢俊一が、混ぜるのは適切ではない記述
同士を継ぎはぎコピペしたために、何かおかしなことになったと推測はできるけれども。

http://kara-sen.cocolog-nifty.com/buntai/2004/04/post_12.html
>ノーベル賞はフィービゲルに与えられた。しかし二人の死後、「ネズミの胃がん」は、
>がんではなかったことが判明する。湯川秀樹の受賞より二十三年も前の、幻のノー
>ベル賞物語を追った。
>『100人の20世紀』朝日文庫



さらに、唐沢俊一も紹介している、「ウサギの耳に3年間、ひたすらコールタールを塗り
続け」た、「東大の山極勝三郎」――今思えば、彼の方にノーベル賞をあげるべきだった
との批判や反省は理解できる。

しかし、「フィビゲルの死後の研究で、〈略〉この説は覆された。」というのなら、ノーベル
賞は存命の人間が対象でもあることだし、「ノーベル賞最大の汚点と呼ばれた事件」と
までいわれる理由が、今ひとつ納得できない。唐沢俊一の書いているように「ガンになる
ネズミは、ごくまれな種類」――つまり、まれとはいえ、がんになるネズミはいる――という
ならば、なおさら。

とまあ、悩んでいたのだけど、要するにこれも、『史上最大のムダ知識』の出た 2007 年
の時点の Wikipedia の記述を元にしたと思えば、納得がいく (?) ことを発見。その時点
での「山極勝三郎」の項の記述には、「フィビゲルの受賞はノーベル賞最大の汚点とも
いわれている」と書いてあったのだ。

http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=山極勝三郎&oldid=9721431
>その一方で山極による人工癌の発生に先駆けて、デンマークのヨハネス・フィビゲル
>が寄生虫による人工癌発生に成功していた。当時からフィビゲルの研究は一般的な
>ものではなく、山極の研究こそが癌研究の発展に貢献するものではないかという意見
>が存在していたにもかかわらず、1926年にはフィビゲルにノーベル生理学・医学賞が
>与えられた。
>後年、フィビゲルの研究はごく一部のネズミにのみ再現可能であることが実証されて
>おり、現在の人工癌の発生、それによる癌の研究は山極の業績に拠るといえる。
>当時の選考委員のひとり、スウェーデンのフォルケ・ヘンシェンは来日した際に「山極
>にノーベル賞を与えるべきだった」と当時の選考委員のミスを悔やんだという。また、
>選考委員会が開かれた際に「日本人にはノーベル賞は早すぎる」との発言があったこ
>とも明かしている。原則としてノーベル賞の選考は非公開とされているが、フィビゲル
>の受賞はノーベル賞最大の汚点ともいわれていることから贖罪の意味もこめて明かし
>たのではないかとされている[要出典]。


「当時からフィビゲルの研究は一般的なものではなく」という意見があり、さらに「日本人
にはノーベル賞は早すぎる」という人種差別的意見があったとしたら、「最大の」かどうか
はともかく、なるほど「汚点」といわれても仕方がないかも。

ただし、最新の Wikipedia の記述では、「ノーベル賞最大の汚点ともいわれている」は
削除され、「東洋人にはノーベル賞は早すぎる」についても、「『100パーセントないだろ
う。』と指摘している」、「科学ジャーナリストの馬場錬成」の意見も併記するようになって
いる。

http://ja.wikipedia.org/wiki/山極勝三郎
>その一方で山極による人工癌の発生に先駆けて、デンマークのヨハネス・フィビゲル
>が寄生虫による人工癌発生に成功していた。当時からフィビゲルの研究は一般的な
>ものではなく、山極の研究こそが癌研究の発展に貢献するものではないかという意見
>が存在していたにもかかわらず、1926年にはフィビゲルにノーベル生理学・医学賞が
>与えられた。
>しかし1952年アメリカのヒッチコックとベルは、フィビゲルの観察した病変はビタミンA
>欠乏症のラットに寄生虫が感染したさいにおこる変化であり、癌ではないことを証明し
>た。フィビゲルの残した標本を再検討しても、癌とよべるものではなく、彼の診断基準
>自体に誤りがあったことが判明した。現在、人工癌の発生、それによる癌の研究は山
>極の業績に拠るといえる。
>当時の選考委員のひとり、スウェーデンのフォルケ・ヘンシェンは来日した際に「山極
>にノーベル賞を与えるべきだった」と当時の選考委員のミスを悔やんだという。また、
>選考委員会が開かれた際に「東洋人にはノーベル賞は早すぎる」という発言や、同様
>の議論が堂々と為されていたことも明かしている[1][2]。
〈略〉
>2.^ 朝日新聞社編 『100人の20世紀(上)』 朝日文庫 p237-「山極勝三郎」。ただ
>し、科学ジャーナリストの馬場錬成はその著書『ノーベル賞の100年』(中公新書)の中
>で、3回にわたるノーベル財団への取材経験から、ノーベル賞選考における日本人差
>別は「100パーセントないだろう。」と指摘している。



思うに、2007 年の時点の Wikipedia の「ヨハネス・フィビゲル」と「山極勝三郎」の項
の記述は、それぞれ単独で見ればともかく、下手な抜き出し方をして組み合わせると
整合性のとりにくくなくなるものだったのではないか。そして唐沢俊一はまさに、下手な
抜き出しと組み合わせをしてしまったため、意味不明な文章になったのではないかと。


なお、唐沢俊一のいう、「これ以降、ノーベル賞は、正当性が確実な研究結果にのみ、
賞を贈ることになっている」について。

http://ja.wikipedia.org/wiki/ノーベル賞
>トムソン・ロイターは旧トムソン時代から毎年独自にノーベル賞候補を選定発表してい
>るが、これは近年の論文の引用数などから算出したものである。ただしノーベル賞は
>アカデミズムにおいて業績の評価がある程度定着してから決定されることが多いの
>で、必ずしもこの基準で賞が決まるわけではない。


確かに、上の引用のような「ノーベル賞はアカデミズムにおいて業績の評価がある程度
定着してから決定されることが多い」という話はよく聞くところではあるけれど、そうなった
のはヨハネス・フィビゲルの受賞の件があったから、とする資料も特に見あたらない。
ターニング・ポイントとなった事件 (?) として重要視されている様子もないのだ。

その他参考 URL (ノーベル賞の汚点? 間違い?):
- http://www.cs.kyoto-wu.ac.jp/~konami/Essay00-02/minusion.html
- http://blogs.yahoo.co.jp/w1919taka/47357275.html
- http://www-het.phys.sci.osaka-u.ac.jp/~higashij/lecture/coe07/4hanmorio.pdf
- http://www.riverplus.net/sci/2006/01/post_34.html

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