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2010.01.11 (Mon)

ありえないともいいきれない「桜吹雪の刺青」

『地上最強のムダ知識』 P.173

 さて、金さんは若いころ遊び人で、刺青をしていたと当時から囁かれて
いた。ただし、時代劇のように脱いで見せはしなかったので、絵柄は不明。
女の生首だった、との説もある。
 なお、おなじみの「桜吹雪の刺青」は、江戸時代ではありえない図柄で
ある。当時、主流だった山桜や里桜の花は1ヵ月くらい咲き続け、桜吹雪
のように一斉に散りはしなかった。
 桜吹雪のイメージが定着したのは、明治時代に、パッと咲いてパッと
散るソメイヨシノが普及して以降である。


南町奉行の遠山の金さんこと遠山金四郎景元は、「人となり慧敏なれど少時頗る放蕩に
して常に酒を飲み、娼家に寓し、市井無頼の徒と伍した」、「腕に桜花の文身(いれずみ)
せり」 と、それぞれ『日本人名大辞典』、『大日本人名辞書』に書き伝えられている [1]。

また「時代劇のように脱いで見せはしなかった」のも本当で、お白州ではもちろんのこと、
服を脱いだ姿を他人に見せることなく、「奉行時代しきりに袖を気にして、めくりあがると
すぐ下ろす癖があった」ともいう。それが「彫り物を隠していたのではないか」と噂される
理由ともなったが、一方で「彫り物自体を疑問視する説」をも成立可能としている [1] の
だろう。

その他、唐沢俊一も書いているように、「女の生首だった」という説もある。それが実は
「当時はやっていた図柄」というのもすごい話だなあと思っていたら、昭和 20 年代の
銭湯でその実例 (?) を目撃したと証言している人のブログも見つかったり [2]。

――ということで、引用した唐沢俊一の文章の最初 3 行はよいのだが、次の段落に書い
てある「『桜吹雪の刺青』は、江戸時代ではありえない図柄」には首をひねりたくなる。

「桜吹雪の刺青は当時、町火消しや博徒が好んだ絵柄」なので、金さんがその絵柄を
彫っていたはずはないのではないかと書いている人はいたが [3]、「江戸時代ではあり
えない図柄」という理由で否定している資料はみあたらない。

ついでにいえば、「博徒・火消し・鳶・飛脚など」のする「博徒彫り」と、「旗本や御家人の
次男坊・三男坊や、浪人」のする「武家彫り」とという区別が江戸時代当時あった [4] の
だが、金さんの場合は、「通常『武家彫り』するところを『博徒彫り』にしていたという説も
ある」 [1] とのこと。

で、唐沢俊一が「ありえない図柄」という理由の方は、「当時、主流だった山桜や里桜の
花は1ヵ月くらい咲き続け」てとかいうのだけど、細かいことをいえば、ソメイヨシノだって
「里桜」に分類できるのではないかと思ったりもする。「ヤマザクラの園芸品種を総称して
サトザクラ」といい [5]、「人里で開発されたサクラを全てサトザクラという場合もあり」 [6]
との話なのだから。ちなみに、「財団法人 日本さくらの会」では、サクラを野生種と「園芸
品種 (サトザクラ)」の 2 種類に大別し、後者の代表として江戸時代末期に開発された
「染井吉野(そめいよしの)」をあげている [7]。

いや、そうじゃなくてー (どっかで聞いたな……)、重要なのは遠山の金さんのいた時代、
「パッと咲いてパッと散るソメイヨシノが普及」普及する前の江戸中期の桜というものは、
「1ヵ月くらい咲き続け、桜吹雪のように一斉に散りはしなかった」ことと思われるかもしれ
ないが、開花期間 51 日のカンザクラ、25 日のカンヒザクラという品種がある一方、
ヤマザクラの開花期間は 14 日、満開の期間は 7 日で、ソメイヨシノの 16 日と 5 日と
比べてそう大きな差はない。カンザンやシダレザクラもヤマザクラと同じようなもの [8]
で、唐沢俊一のいう「1ヵ月くらい咲き続け」は何かの間違いと思われる。

それと、唐沢俊一の書いていることで気になるのは、「ソメイヨシノが普及して以降」で
ないと、「桜吹雪のイメージが定着」するはずがないと決めつけているようなところ。
八重桜の桜吹雪というのもあるし [9]、山桜の桜吹雪というのもある [10] のだけど。

[1] - http://ja.wikipedia.org/wiki/遠山景元
>遠山 景元(とおやま かげもと)は江戸時代の旗本で、天保年間に江戸北町奉行、後
>に南町奉行を勤めた人物である。テレビドラマ(時代劇)『遠山の金さん』のモデルとし
>て知られる。正式な名のりは遠山金四郎景元(とおやま きんしろう かげもと)。官位
>は従五位下左衛門少尉。
〈略〉
>青年期の放蕩時代に彫り物を入れていたといわれる。有名な「桜吹雪[1]」である。し
>かしこれも諸説あり「右腕のみ」や「左腕に花模様」[2]、「桜の花びら1枚だけ」、「背中
>に女の生首」[3][4]、「全身くまなく」[5][6]と様々に伝えられる。また、彫り物自体を疑
>問視する説や通常「武家彫り」するところを「博徒彫り」にしていたという説もある。彫り
>物をしていた事を確証する文献はないが、時代考証家の稲垣史生によれば若年のこ
>ろ侠気の徒と交わり[7]その際いたずらをしたものであると推測される。続けて稲垣の
>言によれば奉行時代しきりに袖を気にして、めくりあがるとすぐ下ろす癖があった。奉
>行として入れ墨は論外なので、おそらく肘まであった彫り物を隠していたのではない
>かという。ただ、これらは全て伝聞によっており、今となっては事実の判別はし難いの
>が実情である。
〈略〉
>1. ^ 旧幕臣の中根香亭が書いた「大日本人名辞書」の「遠山左衛門尉」の記述「腕に
> 桜花の文身(いれずみ)せり」
>2. ^ 木村芥舟「黄粱一夢」
>3. ^ 中根香亭「帰雲子伝」明治26年(1893年)。なぜ、香亭が片方で「桜花」と書き、
> 他方で「女の生首」と書いたかは不明
>4. ^ 喜田川守貞「守貞謾稿」で当時はやっていた図柄としてあげている
>5 ^ 「浮世の有様」弘化期刊
>6. ^ 石井良助編「江戸町方の制度」
>7. ^ 『日本人名大辞典』(昭和12年(1937年) 平凡社刊)に「人となり慧敏なれど少時
> 頗る放蕩にして常に酒を飲み、娼家に寓し、市井無頼の徒と伍した」とある。


[2] - http://blog.goo.ne.jp/tomonaru0803/e/796156b5cca90cae6fb5ffe74f548bfd
>【大江戸世相夜話】 藤田 覚 中公新書
〈略〉
>この本によれば金さんの刺青には「桜吹雪」、「女の生首」の両説があったようだ。
>私の育った昭和20年代の土浦市内には銭湯が4つあった。その 脱衣場でよく刺青を
>したアニさんたちと出あった。今と違って「その筋の方、お断り」と彫り物を敬遠するよ
>うな空気は当時の銭湯にはなかった。
>その紋々の中に、肩から肘までにかけて「女の生首」を彫った男がいて湯上りの身体
>で坪庭の前で涼んでいたことを、いま突然思い出した。
>少年だったから「気持ち悪い」と思いながらその生首を眺めた。
>この刺青、金さんと同じだったかもしれない。


[3] - http://kazutyan.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-917b.html
> しかし、刺青の絵柄はテレビや映画でおなじみの桜吹雪ではなかったようです。
>桜吹雪の刺青は当時、町火消しや博徒が好んだ絵柄で、ぐれていたとはいえそんな
>絵柄を入れるはずがないというのです。


[4] - http://ja.wikipedia.org/wiki/入れ墨
>十九世紀に入ると刺青の流行は極限に達し、博徒・火消し・鳶・飛脚など肌を露出す
>る職業では、刺青をしていなければむしろ恥であると見なされるほどになった。
>幕府はしばしば禁令を発し、厳重に取り締まったが、ほとんど効果は見られず、やが
>てその影響は武士階級にも波及して行き、旗本や御家人の次男坊・三男坊や、浪人
>などの中にも、刺青を施す者が現れるようになり、デザインにも「武家彫り」や「博徒彫
>り」といった出身身分の違いが投影された。


[5] - http://ja.wikipedia.org/wiki/サクラ
>自然種としてはヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンなど10種ほどが認められてい
>る。園芸品種が多く、花弁の数や色、花のつけかたなどを改良しようと多くの園芸品
>種が作られた。これらのうちヤマザクラの園芸品種を総称してサトザクラ、八重咲きの
>品種を総称してヤエザクラ等ともいう。とくに江戸末期に開発されたソメイヨシノ(染井
>吉野)は、明治以降、全国各地に広まり、サクラの代名詞となった。


[6] - http://ja.wikipedia.org/wiki/サトザクラ
>サトザクラ(里桜)は、オオシマザクラを基にして開発されたと考えられる園芸品種の
>桜の総称。オオシマザクラにヤマザクラ、エドヒガン、カスミザクラ、マメザクラなどを
>掛け合わせたものとされる。
>学名は一応Cerasus lannesiana Carriereとされている。
>また、人里で開発されたサクラを全てサトザクラという場合もあり、この場合は更に多
>くの種類のサクラがサトザクラに分類される。


[7] - http://www.sakuranokai.or.jp/chishiki/shurui.html
> サクラはヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンなどのように山野に自生する野生
>種と「染井吉野」、「普賢象」、「関 山」などのように、観賞を目的に作られた園芸品種
>(サトザクラ)の二つの種類に大別することができます。
〈略〉
>染井吉野(そめいよしの)
>Prunus yedoensis Matsum. cv. Yedoensis
>野生種のヤマザクラのように園芸品種を代表する品種で、全国至るところに植えられ
>ています。花は淡紅色の一重で、新葉より先に密集して咲き、全枝が花にうずまるさ
>まは、真に絢爛豪華です。繁殖が容易で生長も早く、また花つきも非常によいので急
>速に全国各地に普及しました。主に、公園・街路・学校・堤防などの公共施設に集団
>的に植えられています。この品種は江戸時代末期、江戸染井村(現在の豊島区駒
>込)の植木屋が「吉野桜」と称し、売り出したのが始まりで、その後、桜の名所、吉野
>山のヤマザクラと区別するため、この名がつけられました。


[8] - http://www.sakuranokai.or.jp/chishiki/jiki.html
>─ 主な種類の開花期間(東京地方)─
>種類      開花期        満開の期間 開花期間 主な見どころ
>カンザクラ  2月上旬~3月中旬   12日   51日    伊豆半島
>カンヒザクラ 1月下旬(沖縄)~3月  12日   25日    沖縄・名護市、本部町
>ヤマザクラ  4月上旬~中旬      7日   14日    奈良県「吉野山」、京都市
>                                    「嵐山周辺」
>ソメイヨシノ  3月下旬~4月中旬   5日   16日     全国
>カンザン    4月中旬~下旬     8日   19日     全国
>シダレザクラ 3月中旬~4月上旬   7日   15日     全国


[9] - http://koha05.blog8.fc2.com/blog-entry-515.html
>満開です・その9…八重桜と桜吹雪

[10] - http://natum.jp/modules/gallery/index.php?lid=64
>E02.桜吹雪の山桜と新緑のカラマツ(フォトフレームセット 6200円~)

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Comment

>NNT さん

ああっ、よいですよねー。<『京鹿子娘道成寺』とか『義経千本桜』

http://www.youtube.com/watch?v=MzixparcRGo
http://livedoor.2.blogimg.jp/sasazuka69/imgs/c/9/c92cb741.JPG

↑どちらにも玉三郎が含まれているのは仕様です。


江戸時代美術における桜吹雪については、浮世絵でそれらしいのを見つけられたら一発かとも思いましたが、もろ桜吹雪っという感じになっているがし時代が下ってしまうため、本文には使えなかったものがあります。

http://blog.goo.ne.jp/harold1234/e/cc0f7b21d51e5aff5ba61ff9e87490f6
>後ろ姿のカッコ良い「深見自休」(1887)も印象的です。ひらひらと散る
>桜吹雪の下、肩をならして歩くのは一人の武士でしょうか。この衣装は
>向日葵の紋様をあしらっているのかもしれません。まるで夜空で開く花火
>のような花を咲かせています。勇ましい姿です。

http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Yoshitsune_with_benkei.jpg

単に花見の絵というのは、江戸時代の絵にもあるのですが……。
トンデモない一行知識 |  2010年01月12日(火) 01:11 |  URL |  【コメント編集】

●桜と言えば

江戸時代を記憶するのが歌舞伎関係なので、
個人的には『京鹿子娘道成寺』とか『義経千本桜』です。
江戸時代と現代の舞台美術が異なるのも分かっていますし、
演出として桜が散るわけではないけれども、
桜が散る様子と演目内容がリンクしているからこそ、
桜が効果的に使われていると思います。
桜吹雪が無いなんて事はないと思います。
NNT |  2010年01月11日(月) 23:09 |  URL |  【コメント編集】

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