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2010.01.04 (Mon)

興奮と鎮静の厠

『地上最強のムダ知識』 P.97

 なお、作家の谷崎潤一郎は随筆『厠のいろいろ』の中で「便所のにおい
には神経を鎮静させる効用がある」と言っているが、科学的には、小規模
の興奮は、鎮静作用になる。
「神経が興奮していれば、自分が鎮静していることを感覚的に察知できる」
からだ。


×便所のにおいには ○便所の匂には

スカトールについてのこれもスカですね」、「脳内ではなく腸内での変換」に引用した
部分に続く文章。

この少し前に「大便の香りの主成分である『スカトール』には、実にカフェインの2倍もの
興奮作用がある」と書いたこと、しかし谷崎潤一郎は随筆に「便所の匂には神経を鎮静
させる効用がある」と書いていることを、うまくつなげようとして、「小規模の興奮は、鎮静
作用になる」とか書いたのだとは思うけど……そんな無理なことをしない方がよかったの
ではないかと思う。

谷崎潤一郎は、「厠のいろいろ」に、「そう云うと可笑しいが、便所の匂には神経を鎮静
させる効用があるのではないかと思う。」と書いている。鎮静作用があることを客観的な
事実のように主張したわけではない。

また、谷崎潤一郎が「神経を鎮静させる効用があるのではないか」と書いた「便所の匂」
とは必ずしも「大便の香り」とイコールではない。唐沢俊一は読者をそう誤解させたがっ
ているようだけど。

以下、文章中の「画伯」、「草風氏」というのは、「長野草風画伯」のこと。

『陰翳礼讃』 「厠のいろいろ」 P.198 ~ P.199
>画伯の説に依ると、どんなに掃除のよく行き届いた便所でも、必ずほんのりと淡い匂
>がする。それは臭気止めの薬の匂と、糞尿の匂と、庭の下草や、土や、苔などの匂の
>混合したものであるが、しかもその匂が一軒々々少しずつ違っていて、上品な家のは
>上品な匂がする。〈略〉 なるほど、そう云われてみると、便所の匂には一種なつかしい
>甘い思い出が伴うものである。たとえば久しく故郷を離れていた者が何年ぶりかで我
>が家へ帰って来た場合、何よりも便所へ這入って昔嗅ぎ馴れた匂を嗅ぐときに、幼時
>の記憶がこもごもよみがえって来て、ほんとうに「我が家へ戻って来たなあ」と云う親し
>みが湧く。また行きつけの料理屋お茶屋などについても、同様のことが云える。普段
>は忘れているけれども、たまに出かけて行ってその家の厠に這入ってみると、そこで
>過ごした歓楽の思い出がいろいろと浮かんで来、昔ながらの遊蕩気分や花柳情調が
>おもむろに催してくるのである。それに、そう云うと可笑しいが、便所の匂には神経を
>鎮静させる効用があるのではないかと思う。便所が瞑想に適する場所であることは、
>人のよく知る通りであるが、近頃の水洗式の便所では、どうもそれが思うように行かな
>い。と云うのは、他にもいろいろの原因があるには違いないが、水洗式だと、清潔一
>方になってしまって、草風氏のいわゆる上品な匂、都雅の匂のしないことが、大いに
>関係しているのであろう。


谷崎潤一郎が「神経を鎮静させる効用があるのではないかと思う」といっているのは、
「臭気止めの薬の匂と、糞尿の匂と、庭の下草や、土や、苔などの匂の混合したもの」、
「上品な匂、都雅の匂」であり、「糞尿の匂」単独では決してない。

なお、谷崎にとって好ましい「厠らしい上品な匂」をつくりだす「臭気止めの薬」は、
「樟脳かナフタリン」であって、よい匂いであっても丁子などを使用するのはあまり
よくないという意見。

『陰翳礼讃』 「厠のいろいろ」 P.204
>料理屋やお茶屋などで、臭気止めに丁子を焚いている家があるが、やはり厠は在来
>の樟脳かナフタリンを使って厠らしい上品な匂をさせる程度に止め、あまり好い薫りの
>する香料を用いない方がよい。でないと、白檀が花柳病の薬に用いられてから一向
>有難味がなくなったようになるからである。丁字と云えば昔はなまめかしい連想を伴う
>香料であったのに、そいつに厠の連想が結びついてはおしまいである。丁字風呂など
>と云ったって、誰も漬かる奴がなくなってしまう。


その他参考 URL:
- http://www.finesfleurs.com/jp/lesson/column/viola/viola.asp?code=11
- http://blog.papalagi.ws/article/99389735.html

たとえ「糞尿の匂」に興奮作用があったとしても、草や土や苔などの匂い、樟脳かナフ
タリンの匂いといった気分を落ち着かせそうな匂いがあれば、それは「神経を鎮静させる
効用」の方が勝ってもおかしくはないかなと思える。まあ素人考えだけど。


で、どう考えても不思議なのが、「科学的には、小規模の興奮は、鎮静作用になる」、
「神経が興奮していれば、自分が鎮静していることを感覚的に察知できる」のくだり。

「神経が〈略〉」の部分もは、唐沢俊一が「」で囲んで書いているため、見方によっては
「厠のいろいろ」からの引用のように思わせるけど、実際には「厠のいろいろ」の中には
そのような記述はない。

何だか意味不明だが、唐沢俊一以外の人による説明ならば理解もできるかも――と思っ
て捜してみたが、いくら捜してもそういう話は見つからない。たとえば、気分を落ち着かせ
たいときなどに、ごく少量の興奮剤を使用したりする例でもあるのかとも思ったが、それ
もなし。

……で、うがちすぎというやつかもしれないけど、「小規模の興奮は、鎮静作用」って、
少しだと逆の作用をするという発想がちょっとホメオパシー。

『奇妙な論理』を読んでも無駄だった唐沢俊一の語るホメオパシー

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Comment

>金平糖さん
「精神的に落ち着いた状態になる」みたいなことを、いおうとしたのでしょうか、やはり。
一応私も、鎮静剤がきいて眠ってしまっている状態とか、薬の副作用などで過剰鎮静の状態とかでは、「自分が鎮静していることを感覚的に察知できる」どころではないだろうから、そういうことをいいたかったのかなどといろいろ考えたのですが、それでも意味不明だよなあと挫折しました。@_@

>唐沢氏の文章のへたさと、上手い文章を書く努力をしないことには強い
>嫌悪感を感じます。

>書く対象に対する誠意か、読んでくれる読者に対する誠意か

唐沢俊一にすれば、そんなことしなくても、編集者が原稿を通してくれて、一部のアンチ以外は文章の内容について特に文句もいわない、むしろ褒めてくれる状態なのに、どうしてそんなものが――という気持ちなのでしょう。
トンデモない一行知識 |  2010年01月05日(火) 08:29 |  URL |  【コメント編集】

>「神経が興奮していれば、自分が鎮静していることを感覚的に察知できる」

神経が興奮してたら鎮静してないだろうに、、、

適度な緊張感、興奮状態の方が冷静な判断ができ精神的に落ち着いた状態になる。
脳が活性化した状態で安定しているのが理想的で
興奮による神経伝達物質の増加は快状態と覚醒を促す。

少量の興奮で安定した状態になるわけだが
車のアイドリング状態が安定していると言っても沈静化しているとは言わないように
この状態は、興奮状態によって安定がもたらされているのであって
鎮静してなどいない。

書き方を考えればもっとずっと説得力のある文章になるのに
唐沢氏は致命的なほど文章がへたくそだ。
唐沢氏の文章のへたさと、上手い文章を書く努力をしないことには強い嫌悪感を感じます。
何より読者に対する誠意のなさは致命的だと思います。
書く対象に対する誠意か、読んでくれる読者に対する誠意か
最低でもこのどちらかがなければ話にならないです。
金平糖 |  2010年01月05日(火) 00:17 |  URL |  【コメント編集】

さっそく異論 (?) がw < 唐沢俊一の苦手科目

>というか、得意科目があるんでしょうか?

SF じゃないでしょうか。語る方じゃなくて、むしろ実践する方として。
トンデモない一行知識 |  2010年01月04日(月) 22:03 |  URL |  【コメント編集】

歴史も苦手だと思いますw>唐沢俊一の苦手科目。というか、得意科目があるんでしょうか?
NNT |  2010年01月04日(月) 20:58 |  URL |  【コメント編集】

●いろいろ異論もあるかと思いますが

>藤岡真さん
どうもです。(_ _) 唐沢俊一の苦手科目というのはいろいろあるわけですが、個人的には、その中でも、科学と語学が特に苦手じゃないかと思っています。
トンデモない一行知識 |  2010年01月04日(月) 17:55 |  URL |  【コメント編集】

>科学的には、小規模の興奮は、鎮静作用になる。

「科学的には」という言葉だけで、ガセと分かりますね。
藤岡真 |  2010年01月04日(月) 16:39 |  URL |  【コメント編集】

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