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2010.01.01 (Fri)

他人の宮沢賢治論についてアレコレ言っている場合ではない唐沢俊一先生 (3)

『トンデモ一行知識の世界』 P.173 ~ P.174

 これが、桑原啓著『宮沢賢治と霊の世界』(土曜美術社出版販売)になる
ともっとすごい。
 この著者は、宮沢賢治には霊の世界が見えていた、と言う。そればかり
か、賢治には霊媒の体質があり、始終、“あちら”の世界と行き来をしてい
たのだという。
 著者が宮沢賢治の実弟である清六氏に聞いたところによると、賢治が
死後有名になったり、賢治のことを書く人たちがそれぞれ良い仕事をして
著名になっていくのは
「賢治があちらで一生懸命努力しているから」
 とのことである。なんか、著名になることを求めるのは宮沢賢治にふさわ
しくないようにも思えるが、弟さんがそう言うんだから仕方ない。著者はこの
清六氏もまた霊媒体質であちらの世界が見える人に違いない、と直感する
が、話がそのことに及ぶと、清六氏は
「それはタブーですから」
 と口を閉ざしてしまった、という。しかし、このことによって著者には、賢治
が霊の世界の具視者であったという確信をますます強めるのだ。


×桑原啓著 ○桑原啓善著
×このことによって著者には、 ○このことによって著者は、

「もっとすごい」というのは、「他人の宮沢賢治論についてアレコレ言っている場合では
ない唐沢俊一先生 (2)
」のエントリーで引用した文章で唐沢俊一のいっている「過剰な
入れ込みの結果、すさまじいまでに独創的(好き勝手)な読み方をしてしまっている
トンデモなもの」としてすごいということだと思われる。

まあ、「他人の宮沢賢治論についてアレコレ言っている場合ではない唐沢俊一先生 (1)
――そこに引用したのは上記の文章の続きの部分――の追記にも書いた通り、「桑原啓」
というのは「桑原啓善」の間違いであるわけで。そして、桑原啓善という人は唐沢俊一と
違って、森荘巳池を「森荘巳」と間違えたりはしていないというのも、どちらがトンデモか
わかったもんじゃない感を強くさせたりする。

また、桑原啓善はその著書の中で、「具視者」という言葉を使ったりもしていない。この
奇妙な用語は唐沢俊一のオリジナルのようで、「"具視者"」と二重引用符つきでググる
とヒットする項目なしで、引用符なしの検索結果では、岩倉具視に関するものばかりが
ヒットするというオチで……。

そのような細かい言葉上の問題 (これはこれで無視できない問題とは思っている) だけ
ではなくて、この『宮沢賢治と霊の世界』をトンデモ本呼ばわりするのは、結構難易度
高いんじゃないかなあという問題もあって。

他人の宮沢賢治論についてアレコレ言っている場合ではない唐沢俊一先生 (1)」の
エントリーの方もあわせて参照していただきたいのだけど、生前の賢治と親交のあった
森荘巳池 (直木賞作家、本名は森佐一) の証言は、賢治を研究する人たちのあいだで
普通に重要視されている。

著者の桑原啓善は、この森荘巳池と、賢治の実弟の宮沢清六の両方に、直接話を聞い
ているというのが強い。これをトンデモと否定したいのならば:

1. 彼らがそんなことを話したはずがないということを、自分が実際に話を聞きにいくか、
  他の資料との矛盾の指摘などで明らかにする。

2. 彼らはそんなことを話したかもしれないが、それをこのこと (この場合は賢治霊媒説)
  の証拠とするのはおかしいと論理的に批判する。

のどちらかの線でいくしかないと思うが、どうだろうか。

困ったことに唐沢俊一は、「弟さんがそう言うんだから仕方ない」で、上のどちらも放棄
している感じ。

「なんか、著名になることを求めるのは宮沢賢治にふさわしくないようにも思える」とは
書いているものの、それはそれこそ単なる唐沢俊一の「入れ込みの結果」でしかないん
じゃないのと思えるし……。以前のエントリーと引用が重複するけど、宮沢賢治自身、
以下のようなことを手紙に書いているため、世に自分の名前を知らしめる願望と無縁
だったとも思いにくいのだ。

http://soumon-mori.com/us_page_28.html
>私はあの無暴な「春と修羅」に於て、序文の考を主張し、歴史や宗教の位置を全く
>転換しようと企画し、それを基骨としたさまざまな生活を発表して、誰かに見て貰いた
>いと、愚かにも考えたのです。あの篇々がいいも悪いもあったものではないのです。

>私はあれを宗教家やいろいろの人たちに贈りました。


まして、「賢治のことを書く人たちがそれぞれ良い仕事をして著名になっていく」の方は、
無私無欲なよい人としての賢治像を押し通したとしても、齟齬をきたすものではないし。


ちなみに、唐沢俊一の文章だと、「タブー」うんぬんについて意味不明のきらいがある
が、桑原啓善の書いているのは、以下のようなこと。

『宮沢賢治と霊の世界』 P.27
>たとえば、花巻農学校に森氏が訪ねて行った時、賢治が窓の外を指さして「あの森の
>神様はあまり良くない、村人を悩まして困る」と語ったことなど、本当かときくと、「そう
>です。賢治はそういうものが、見えたし、聞こえたし、はっきり感じたのですね。しかし、
>そういう事はうっかり同僚などには話せません。それにお父さんがそれを嫌い、それを
>口にすることは宮沢家のきついタブーだったのです」


『宮沢賢治と霊の世界』 P.28
>「賢治には、迷った魂のようなものがよく見えていたようです。ですが、それを口にしな
>いのは、関係者がいるから、その人を傷つけてはいけない、だから話さないと、この
>部屋で私に語りました。賢治は“瞬時といえども、人をまどわせてはいけない”そういう
>強いモットーに生きた人です」。


『宮沢賢治と霊の世界』 P.29
> 清六氏の最も印象に残った言葉は、賢治が死後どんどん有名になったのは、また、
>賢治のことを書く人達がそれぞれ良い仕事をして著名になるのは「賢治があちらで
>一生懸命努力しているから」と、繰り返し述べたことだった。これが判る人があろうか。
>私には晴天の霹靂のようによく分った。清六氏も賢治と同じだ。異次元のことが分る
>人だ。分るだけでなく、その存在を確信していて、現実に作用を及ぼすことを、身体で
>知っている人だ。私は賢治が半ばそこにいるのではないかと目を疑った。
> その事に気をよくして、私はつい図に乗って「鬼神」のことに話題を向けた。途端に、
>清六氏の顔がひきつり、「それはタブーですから」と語ろうとしなかった。
> 私は過ちを犯したのかもしれない。だが、その事がどんなに重い意味をもつか。
>逆に、私には、宮沢家の重いタブーが、それほどに、賢治が鬼神について多くのかか
>わりをもつ人間であったことを裏書きしている。そのことで賢治解明の切り口は十分
>であるかもしれない。


まあ、「賢治があちらで一生懸命努力しているから」程度のことは、特に霊媒体質でない
人でも、もののたとえみたいな感じでいうことはあるだろうから、それをもって「清六氏も
賢治と同じだ。異次元のことが分る人だ」とか「その存在を確信していて、現実に作用を
及ぼすことを、身体で知っている人だ」とまでいわれても、少々困るというのはある。

かといって、唐沢俊一の「しかし、このことによって著者には、賢治が霊の世界の具視者
であったという確信をますます強めるのだ」というのも、要約としてはどうかと思うし……。
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 |  2012年12月11日(火) 16:29 |   |  【コメント編集】

>yonoさん
あけましておめでとうございますー。

>自分の理解出来ない事は理解出来ないと素直に言えたら

そういうキャラだったら、そもそも賢治には手を出さなかったかと。
トンデモ本認定して笑いたいのだったら、それがもっと楽にできる本も出版されているんじゃないかなとも思います。本の選択を誤ったんじゃないかという気がします。
トンデモない一行知識 |  2010年01月02日(土) 12:37 |  URL |  【コメント編集】

とりあえず(というのもなんですが)あけましておめでとうございます(^0^)/

>なんか、著名になることを求めるのは宮沢賢治にふさわ
>しくないようにも思えるが、弟さんがそう言うんだから仕方ない。

このくだりは典型的な「唐沢俊一視点であらゆる事柄を見る」というのをやったんですね
自分の理解出来ない事は理解出来ないと素直に言えたらよかったんですけどね…
yono |  2010年01月02日(土) 02:05 |  URL |  【コメント編集】

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