2017年05月 / 04月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫06月

--.--.-- (--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告  |  EDIT  |  Top↑

2009.11.15 (Sun)

串刺しにして血で煮込む、もつ煮込み

裏モノ日記 2009年 11月 05日(木曜日)
http://www.tobunken.com/diary/diary20091105124941.html

モツとかスジなどの煮込みを食うと、何となく身体にパワーが
宿るような気になってくる。
こういう料理の記述で最も心に残っているのは松原岩五郎の
『最暗黒の東京』の獣肉食の件で、原文をぜひ引用したいのだが
引っ越し荷物の中にまだまぎれているので、雑賀恵子『空腹に
ついて』(青土社)の中の(たぶん雑賀による)現代語訳を
引くが

「馬肉飯は、深川飯と同じ調理法で、種は馬肉の骨付きを
 こそげ落としたものであり、一杯一銭、脂の臭いが強く鼻
 を突いて食べられたものではないが、労働者は三、四杯を
 かき込む。
 煮込みは労働者の滋養食で、屠牛場の臓腑、肝、膀胱、
 舌筋などを買い出して細かく切ったものを串刺しにして、
 醤油と味噌を混ぜた汁で煮込んだもの。一串二厘で、嗜み
 食うものは立ちながら二〇串を平らげたが、腥さが鼻の辺
 りまで漂い、味も異様でとても常人の口にするものではな
 い」

などとある。最初にこの文章を読んだのは十八か九のときだった
と思うが、明治人の松原が臓物食を徹底して汚らわしがっている
のが逆にユーモラスで、何か食欲がわいてきてしまったもの
だった。いまやモツ料理は美容にいい、と良家の子女まで
“嗜み食う”。時代なるかな。


2ちゃんねるのスレでも指摘されていた (Read More 参照) 通り、『最暗黒の東京』での
松原岩五郎は、「明治人」だから「臓物食を徹底して汚らわしがっている」のとは少し
違うし、「ユーモラスで、何か食欲がわいてきてしまったものだった」などと書いている
唐沢俊一は、「その調理法の不潔なる」と恐れをなしたようなことを書いてある原文を、
本当に読んでいるかは疑わしいということで。

日記に引用されている「現代語訳」だけ読んでいた時点も、これで「何か食欲がわいて
きてしま」うものかなあ、そりゃ「嗜み食うものは立ちながら二〇串を平らげた」などとも
書いてあるけど……と思ったが、『最暗黒の東京』を実際に読んでみると、これで食欲が
わいたというのは、無理があり過ぎという感じで。

「原文をぜひ引用したい」とホザいていた唐沢俊一の代理で、該当個所を引用してみる。

『最暗黒の東京』 P.144 ~ 145
> 馬肉飯――これは甚だ風韻を損じたる名目なれども、現今下等食店第一の盛景を
>以て賑わう。料理の法は深川飯と同じ按排なれども、その種は馬肉の骨附をコソゲ
>落としたものなれば、非常なる膏膩の香強く鼻を撲て喰うべからざるが如し。一杯
>一銭にて健啖なる労働者は嗜みて三、四杯を襲ぬ。
> 煮込み――これは労働者の滋養食にして種は屠牛場の臓腑、肝、膀胱、あるいは
>舌筋等を買い出してこれを細かに切り、片臠となして田樂のごとく貫串し、醤油に味
>噌を混じたる汁にて煮込みし者なり。一串二厘にして嗜み喰うものは立ながら二十串
>をたいらぐるを見る。腥臭鼻辺に近くべからず。牲味異にしてとても常人の口に容べ
>からず。加うるにその調理法の不潔なる、ほう汁に血液を混じて煮出となし、あたかも
>籠城糧竭たる窮卒が人肉を屠り煮るが如く見えて悚然たる心地す。〈略〉しかして、
>これを煮売者はまたいずれも片輪の如き廢人にして、元より貧窟の老耄なれば、塩
>梅するに完全な器具を有せず。鍋は古銅鉄屋に十年も曝されたるが如き破器にて
>渋くさび付き、我楽多屋の檐下に雨曝しとなりし下駄箱の砕けたるを僅かに補ろいて
>鍋を支う。

(「ほう汁」の「ほう」、「さび付き」の「さび」は漢字が出せなかった……)

牛もつを細かく切るまではよいとして、それを串刺しにして血を混ぜた汁で煮出すという
のは、唐沢俊一が「良家の子女まで“嗜み食う”」という現在のもつ煮込みとは、まったく
別の料理と考えた方がよさそう。『最暗黒の東京』の煮込みには、大根やコンニャクも
なければ、ショウガやニンニク、ネギのような臭みを消すための材料もない様子だし。

もつ煮込みのレシピ例:
- http://www.e-2929.com/resipi/motuni/motunikomi.html
- http://recipe.gourmet.yahoo.co.jp/E211051/
- http://www.ajinomoto.co.jp/recipe/card/701500/701145.asp

で、唐沢俊一のいう「明治人の松原が臓物食を徹底して汚らわしがっている」は、臓物を
材料としない「深川飯」を「磯臭き匂いして食うに堪えざるが如し」、「田舎団子」を「咽喉
を通る品にあらず」、「沸騰散の四、五杯も傾けざれば消化しがたき心地」――と散々な
ことを書いている一方、臓物食として紹介している「焼鳥」の匂いや味については何も
貶していないことから、ガセに数えてよいのではないかと。

『最暗黒の東京』 P.144
> 深川飯――これはバカ〔貝〕のむきみに葱を刻み入れて熟烹し、客来れば白飯を丼
>に盛りてその上へかけて出す即席料理なり。一椀同じく一銭五厘、尋常の人には
>磯臭き匂いして食うに堪えざるが如しといえども、彼の社会においては冬日尤も簡易
>なる飲食店として大に繁昌せり。


『最暗黒の東京』 P.146
> 焼鳥――煮込と同じく滋養品として力役者の嗜み喰ふ物。シャモ屋の庖厨より買出
>したる鳥の臟物を按排して蒲燒にしたる物なり。一串三厘より五厘、香ばしき匂い忘
>れがたしとて先生たちは蟻のごとくに麕って賞翫す。
> 田舎団子――饂飩粉を捏て蒸焼にし、これに洋蜜またはキナ粉を塗したる物。舌障
>り悪くしてとても咽喉を通る品にあらず。もし誤まって食えば沸騰散の四、五杯も傾け
>ざれば消化しがたき心地す。しかれども、健胃なる労働者はこれを中食の代用として
>微かな草蛙銭を蓄積するなり。


また、松原は、煮込みにも焼鳥にも「滋養」という言葉を使っている。臓物食は、ホルモン
と呼ばれるようになった時代 (第二次世界大戦前後?) よりも、ずっと前から、元気のでる
滋養食と認識されていたのかなと思うと興味深い。

参考:
- http://ja.wikipedia.org/wiki/ホルモン焼き
- http://zarutoro.livedoor.biz/archives/50373145.html

とにかく、『最暗黒の東京』の「車夫の食物」の章は、料理の材料と簡単な調理法を説明
する最初の一文だけ読むと、それなりにおいしそう (特に田舎団子) にも思えるけど、その
部分の記述は特にユーモラスとはいえない。続く文章の多くは、常人にはとても食べら
れるものではないとか、松原の貶し方は「逆にユーモラス」といえるかもしれないけど、
刺激されかけた食欲はしぼむばかりとなるもの。


ところで、今回参照した岩波文庫版『最暗黒の東京』は、奥付けに「1988 年 5 月 16 日
第 1 刷発行」と書かれているのだけど、1958 年生まれの唐沢俊一はなぜか、「最初に
この文章を読んだのは十八か九のときだった」と書いている。

岩波文庫の解説によると、「『最暗黒の東京』(明治二六年)の発刊」であり、唐沢俊一
は、明治の古本はほとんどもっていないと、どこかに書いていた気がするんだけど。



More...

http://love6.2ch.net/test/read.cgi/books/1256663851/
-------
693 :無名草子さん:2009/11/08(日) 04:53:22
>こういう料理の記述で最も心に残っているのは松原岩五郎の
>『最暗黒の東京』の獣肉食の件で、原文をぜひ引用したいのだが
>引っ越し荷物の中にまだまぎれているので、雑賀恵子『空腹に
>ついて』(青土社)の中の(たぶん雑賀による)現代語訳を
>引くが
……(中略)
>などとある。最初にこの文章を読んだのは十八か九のときだった
>と思うが、明治人の松原が臓物食を徹底して汚らわしがっている
>のが逆にユーモラスで、何か食欲がわいてきてしまったもの
>だった。
      裏モノ日記 ::2009年 :: 11月 :: 05日(木曜日)より

また、なんか怪しいな。www

700 :無名草子さん:2009/11/08(日) 07:40:59
>>693

「原文をぜひ引用したいのだが 引っ越し荷物の中にまだまぎれているので」
などといつもデタラメな文語調で書いてるヤツが偉そうなことを。

759 :無名草子さん:2009/11/08(日) 18:12:32
>>693
>また、なんか怪しいな。www
手元に『最暗黒の東京』があったので確認。

>松原が臓物食を徹底して汚らわしがっている
これは確かにその通りなんだが、

>逆にユーモラスで、何か食欲がわいてきてしまった
『最暗黒の東京』では、日記で引用している部分の後にも、
「加えて調理方法の不潔なことよ、血の混じった煮汁はまるで
兵糧責めで飢餓状態の城内で人肉を調理しているみたいでゾッとする
しかも調理販売しているのは、皆かたわのような廃人だし
鍋は錆びているし…」と続くんだが、それを読んで食欲がわいた?

>『最暗黒の東京』の獣肉食の件
該当の章は、車夫の食事についてルポしている部分で
馬肉飯の前段でも、深川飯について同様に「普通の人間なら
磯臭くて食えたもんじゃない」と書いているし、それ以外にも
丸三蕎麦、田舎団子といったジャンクフードを、やはり
普通の人間には食えたものではないと紹介している。

つまり松原は貧困層の食生活の貧しさや不潔さをルポしているので
明治人だから獣肉食を汚らわしがっているのではない。
そもそも別の章では、貧困層の飲食店そのものについても
「世の中の不潔を全て集めたような場所」と書いているし、
だいいち『最暗黒の東京』が出た明治26年には、
肉食はもう一般的に普及していたのでは?

というわけで、パクリやガセだとまでは思わないが、
>最初にこの文章を読んだのは十八か九のときだった
これは見栄はってんじゃない?W
本当は雑賀恵子の本しか読んでいないんでしょ?W

763 :無名草子さん:2009/11/08(日) 18:31:18
>>759
乙。

>つまり松原は貧困層の食生活の貧しさや不潔さをルポしているので
>明治人だから獣肉食を汚らわしがっているのではない。


原典にあたるというのはとても大事ですね。

------
スポンサーサイト

テーマ : 読書メモ - ジャンル : 本・雑誌

10:34  |  その他の雑学本 間違い探し編 (324) +  |  TB(0)  |  CM(6)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

>今古風さん
いえいえ、ありがとうございます。(_ _)

http://opac.ndl.go.jp/recordid/000001210083/jpn 
>請求記号 210.6-G292
>タイトル 現代日本記録全集. 第14
>出版地 東京
>出版者 筑摩書房
>出版年 1970
>形態   328p 図版 ; 20cm
>各巻タイトル  生活の記録 / 鶴見俊輔編
>内容細目  対談・金子ふみ子をめぐって(井上光晴,鶴見俊輔)
>最暗黒の東京(松原岩五郎) 日本の下層社会(横山源之助) 何が
>私をこうさせたか(金子ふみ子)
>入手条件・定価 580円

うーむ、岩波文庫の『最暗黒の東京』だけで 200 ページに加えて、『日本の下層社会』が文庫本 407 ページ、『何が私をこうさせたか』が単行本で 346 ページとなると、「328p」に全部おさめるのは難しそうなので、抜粋して載せているのかも。

http://www.amazon.co.jp/dp/4003310918
>日本の下層社会 (岩波文庫 青 109-1) (文庫)
〈略〉
>文庫: 407ページ

http://www.amazon.co.jp/dp/4393435109
>何が私をこうさせたか―獄中手記 (単行本)
〈略〉
>単行本: 346ページ
トンデモない一行知識 |  2009年11月19日(木) 00:10 |  URL |  【コメント編集】

もう済んだことを何度もすみません。
NDLで検索したら
『現代日本記録全集 第14 生活の記録』 鶴見俊輔編(筑摩書房、1970)
にも「最暗黒の東京(松原岩五郎) 」が収録されてました。

わりと何度も出版されてるんですね。
今古風 |  2009年11月17日(火) 12:43 |  URL |  【コメント編集】

>今古風さん
>『最暗黒之東京』というタイトルで日本思想史資料叢刊の一冊として77年に

教えてくださってありがとうございます。(_ _)

1977 年刊の、長陵書林社の『最暗黒之東京』、1980 年の現代思潮新社
古典文庫の『最暗黒の東京』とあるようですね。

http://www.amazon.co.jp/dp/B000J8XMEE/
>最暗黒之東京 (1977年) (日本思想史資料叢刊〈2〉) [古書] (-)
>出版社: 長陵書林 (1977/06)
>発売日: 1977/06

http://www.amazon.co.jp/dp/4329003538/
>最暗黒の東京 (古典文庫 53) (-)
>出版社: 現代思潮新社 (1980/01)
>発売日: 1980/01

# って、もっと早くに Amazon.co.jp を松原岩五郎で検索すればよかったです……。(_ _);

唐沢俊一が「最初にこの文章を読んだのは十八か九のときだった」というのが
本当だとしたら、1977 年に出た方が対象でしょうけど、だとしたら、

×『最暗黒の東京』 ○『最暗黒の東京』

ということになるのかしら。
トンデモない一行知識 |  2009年11月16日(月) 22:00 |  URL |  【コメント編集】

いつも楽しく拝見しています。

一応この本は『最暗黒之東京』というタイトルで日本思想史資料叢刊の一冊として77年に長陵書林から刊行されているようですね。
今古風 |  2009年11月16日(月) 11:06 |  URL |  【コメント編集】

>通りすがりさん
まあ、松原岩五郎の方は「汚らわしい」と書いているわけではなく、調理法と鍋が不潔といっているだけですから。「臓物食を徹底して汚らわしがっている」としたら、「焼肉」の記述がああはならないだろうと思うというのは本文に書いた通りで。ただし、「籠城糧竭たる窮卒が人肉を屠り煮るが如く見えて」は、見かけがグロいことへの嫌悪感かもしれません。

油かすやさいぼしについては、しりませんでした。臓物食が近年広く普及したのは、保存技術の発達によるものとは聞きますが、保存食としてのものもあったのですね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/油かす_(食品)
http://ja.wikipedia.org/wiki/さいぼし

で、唐沢俊一が「臓物食を徹底して汚らわしがっている」と書いた理由は、部落とかは関係なくて、とにかく臓物食をゲテモノ扱いして、それを食べたがる俺カッコイイ程度なものではないかと思います。
トンデモない一行知識 |  2009年11月15日(日) 21:12 |  URL |  【コメント編集】

昔の人の言うホルモンはさいぼしや油かすが混同されている場合があるのではないでしょうか?
今では一部地区で食べられていると思われがちですが、南米の日系移民の間では現在でも好んで食べているてそうなので、明治時代には一般に広く食べられていたのかも知れませんね。
汚らわしいと決めつけるはひどい偏見ですね。
通りすがり |  2009年11月15日(日) 20:36 |  URL |  【コメント編集】

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://tondemonai2.blog114.fc2.com/tb.php/297-e66dd528

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。