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2009.08.07 (Fri)

サイコさんまたはエキセントリック中年ミドルエイジからの手紙

別冊宝島『実録!サイコさんからの手紙』に、「唐沢俊一(評論家)」が引用している
「Iくん」からのメールについて。

ちなみに、このコーナーのタイトルは「実録!エヴァンゲリオン症候群!!」であり、
「アダルト・チルドレン世代との往復メール」、「自我を過剰に防衛しようとする僕の
弟子――。アダチル世代の弟子とオタク系師匠が交わした、前代未聞の往復書簡!」
とのコピーがついている。

唐沢俊一は「アダルト・チルドレン」とは「もともとはアルコール依存の両親の元で育て
られたために〈略〉」という意味であると語りつつ、「最近のマスコミでは、そこから転じて、
自我に対し異常に固執して、外界との摩擦によって自我が侵されることを極端に嫌い、
反発する一群の若者指すのが一般的らしい」と定義しなおす。そして、「なんにしても、
社会不適応者」と断ずる。

その唐沢俊一のいう「アダチル世代」である「Iくん」からのメール――といってもニフティの
パティオとよばれる会議室での発言――のうち、今回は最初の 3 つを、まず引用してみる
テスト。

以下の文章に、仮に (A) と番号をつけるとする。

(A) -- 『実録!サイコさんからの手紙』 P.100

「Iす。
 ちゃんとROM(閲覧)していましたよ。
 酒鬼薔薇については、不特定多数に向かってとくに何か言う気が起き
なかったです。
 僕はたぶん、あの犯人は“なんとなく”猫や淳くんを殺してしまったのだ
と思う。
 で、“殺しちゃった”後から、後づけであの声明文を書き、死体を加工し、
自分で、あとになって物語をこさえたのだという解釈をしています。“なん
となく”では怖いから、落ち着かないから、“後づけ”だからこそ、理屈が
手近にあったもののパッチワークにしかならない。当然、中身には何もない。
 この“空虚さ”というか、“どうしようもなさもなさ”が事件の本質だと思って
います。だから情緒的な感情移入のしようがない。少なくとも僕には。
 もちろん、こうした“どうしようもなさ”の果てに人が殺される事態が、実は
本当にオソロシイことだとも思っていますが。
 ご期待に添えなくてスイマセン」


そして以下の文章には、仮に (B) と番号をつけるとする。

(B) -- 『実録!サイコさんからの手紙』 P.102

「唐沢様
 お言葉、身に染みます。
 酒鬼薔薇については、実はかなり困惑している部分があります。しかも、
それが何か、はっきりしていないからタチが悪い。
 事件に“ハマる”よりも、タチが悪いもののような気がしています。すごく
深いところの、形にならぬものがあるのです。触れるとヤバイ、という感じ
すらします。
 切通理作がエヴァについて沈黙しているのもこういう理由かもしれません。
 事件について語っていくと、その先に自分の無意識の闇が待っているよう
な予感がするのです。
 それとは別に、最近のあの会議室の“通夜の席にやってきて大酒飲んで
大騒ぎしたあげく、お土産まで持って帰る顔もよく知らない遠縁の親父”と
いうか、“物陰に隠れて罵声を浴びせ、石も投げるが自分の顔は絶対見せ
ない”ノリに辟易していたので、“これ以上サービスしてやるものか”という
気持になったのも事実です。
 客を選べる分際じゃないのは分かっていますが。馬鹿にも通じなければ
芸ではない、というのも分かってはいますが。
 それでも、やはり」


以下には、 (C) と番号をつけるとする。

(C) -- 『実録!サイコさんからの手紙』 P.103 ~ P.104

「題名:パティオのことなど。
唐沢さま。
 モノカキとしての姿勢について、いつも貴重なご意見をありがとうござい
ます。
 この件については、メールか電話でやり取りをしたいと思います。正直な
話、意見を異にするギャラリーのいるところでは僕がちょっとお話ししづらい
ところがあるからです。
 “潔癖性的なプライド”と唐沢さんはおっしゃいますが、無理してバカを
やっても、自分で面白いと思えぬのでは、ツライばかりで得るものがない
ような気がします(バカをするのも、失敗するのも、吝かではありません)。
ただ“面白くもないことを無理に面白がる”ことに抵抗を感じるのです。
“無理に面白がっているうちに面白くなってくる”ということも承知はして
いますが。“なんとしてでも客にサービスする”というスタンスが欠けていた
(というか、考えていなかった)のは事実です。だけど、今のあの会議室の
オタクたちには、やっぱりつらいものを感じます。“どんなことに対しても
当事者にならない。当事者意識を持つ者をあざ笑う”空気が蔓延している
ことにはかなり抵抗を覚えます。
 先の通夜の喩えを唐沢さんは“大衆とはそうしたもんだ”というふうに
解釈されたようですが、あれは、僕としては“対象に、当事者として関わら
ないことを美徳とするようなオタクの気風”の喩えとして出したつもりです。
 これは「良識」の問題とは微妙に異なると思います。
 オタクの靴をなめるにしても、彼らのこういう“全部シャレ”“マジになる
のは常に馬鹿”というドグマとは相容れないものを感じるのです。これは
バカをやること、ジャンクの楽しみを知ること、とはちょっと違ったところに
ある違和感なのです。
 僕としては、こと酒鬼薔薇についてはことさらに良識ぶっているつもり
はありません。やはりそう見えるのでしょうか。」


……困ったことに (?)、3 つとも、「サイコさんからの手紙」には全然見えない。

実はこのコーナーの文末には、「(発言引用に関しては、大意のみを伝え、言い回しを
変えたものになっています)」という、当時はともかくこの件とかを知った今思えば非常に
恐ろしいことも書かれている。

そのため上の「メール」と称するものがどれだけ原文に忠実かは不明だが、唐沢俊一的
には、「なんにしても、社会不適応者」の「アダチル世代の弟子」が書いた文章だ。
それを『実録!サイコさんからの手紙』に載せるのだから、エキセントリックな方向への
改変はあったとしても、その逆はないと考えるべきだろう。

しかし、唐沢俊一のいう「エヴァハマリ男」の文章は、あくまでマトモ。

むしろ、(C) の文章で分析されている「あの会議室のオタクたち」の方が、タチが悪そう
で、何だか「唐沢俊一検証blog」の「『唐沢俊一の処分および処分撤回問題』・その2
で語られている ML の雰囲気もこんな感じだったのかなと思った。「モラルの低さも問題
だがギャグレベルの低さも問題だな。」――の、と学会 ML である。

唐沢俊一は、(C) にある「“どんなことに対しても当事者にならない。当事者意識を持つ者
をあざ笑う”空気が蔓延」とか、「彼らのこういう“全部シャレ”“マジになるのは常に馬鹿”
というドグマ」とかについて、あの会議室の雰囲気はそのようなものではないという類い
の反論はしていない。実際、そういうイヤな雰囲気の場所だったと思ってよいのかな、
やっぱり。


で、「サイコさんからの手紙」にするにはスジが悪そうな文章を、唐沢俊一がどう扱って
いるかというと、以下に述べる通り。

(A) については、「彼の意識下のものを分析するならば」と称して、「“酒鬼薔薇”を
“エヴァンゲリオン”に、“あの犯人”を“庵野監督”に、“殺しちゃった”を“作品を作っ
ちゃった”に置き換えてみると」「まるでわざとしたかのようにピッタリと符合することに
気がつくだろう」と言い張る。「気がつく」ためには読者は、エヴァンゲリオンは“なんと
なく”できてしまった作品であり、ただのパッチワークであって「当然、中身は何もない」
作品であるという前提を共有しないといけない。何か、どちらがサイコさんなんだろうと
つい思ってしまう強引さだ……。

そして (A) と (B) の間には、唐沢俊一先生が会議室に書き込んだ素敵なお説教が
挿入されている。「キミが特異なのは、なんとか『常識性』を保とう、という意識を持って
いることだ。他の連中がなんとかキチガイになろう、鬼畜になろう、って頑張っているの
にね」とか (頑張りどころを間違ってないか、それ?)、「キミにないもの、それはバカを
つらりとしてできる能力だ」 とか (どのページにももれなくガセが含まれる本を書く人の
いうことは、さすが違う)。

そして、(B) の直後には、「やはりここでも、聞いてもいないエヴァが出てくる」と唐沢俊一
は書く。「やはりここでも」も何も、(A) の文章にはエヴァなんか出てきていないのだが。
唐沢俊一が勝手に、「“酒鬼薔薇”を“エヴァンゲリオン”に」置き換えて語っただけで。

(B) に出てくる「エヴァ」も、「切通理作がエヴァについて沈黙しているのもこういう理由
かもしれません」と、それだけなのに……。これではどちらが「エヴァハマリ男」かわかっ
たものではない。

(C) にいたっては、何だかさすがに気がひけるものがあったのだろうか、「他者から
見れば、無害なやりとりに思えるかもしれない」とのエクスキューズつきだ。だが、
唐沢俊一はめげずに (?) こう続ける。

『実録!サイコさんからの手紙』 P.104

しかし、僕にとって、このやりとりは彼の内面における、
「作家(モノカキ)になりたい」
「しかし、こんな狭い場所(会議室)ですら自分の意見を通すことが
できない自分にモノが書けるだろうか」
「いや、自分がウケないのは、相手がバカだからに過ぎない」
 という論理のスリ替えが露骨にみえるものだった。


(C) をどう読めば、上のようなことが「露骨にみえる」のかは不明。まあ今の目で見れば、
「自分にモノが書ける」も、「相手がバカだから」も、見事に証明されているのが皮肉であ
るが。

しかし、こんな無茶苦茶を唐沢俊一が書いていても、この本の発売当時に読んでいた
ときは、モノカキという特殊な世界のことは素人にはよくわからないし、唐沢俊一のいう
ことが正しい世界なのかなあ、怖い世界だなあと、ある意味唐沢俊一に好意的な補完を
加えて読んでいた部分もあったりしたのだから、怖い。


そして最後に、唐沢俊一の「実録! エヴァンゲリオン症候群!!」についての評を、
Web Archive に残る昔の伊藤剛 Web サイトから引用したい。

http://web.archive.org/web/20070625065438/www.t3.rim.or.jp/~goito/gaisetsu1-2.html
>さらに、より一般的な意味で言うところの「アダルト・チルドレン」的な「病理」がある。
>それは、
>「『自分はこの世に存在してもいいのだろうか』という、”居場所のない感覚”である」
>という言葉でまとめられている(唐沢氏自身のことばではなく、引用である)。
>もし、唐沢氏のこの文章が、伊藤を例にとった「ケーススタディ」だとするのならば、この
>唐沢氏の文章中の「伊藤」は、
>●”居場所のない感覚”にさいなまされ、
>●自己が、時代や世界の中に置かれている存在であることを認識せず、
>●(世界や時代との)相対的な距離感覚を欠き、
>●自我のみを守ろうとし、それを侵そうとするものにエキセントリックな罵声を浴びせか
>ける

>……というような者である必要があるだろう。ところが、唐沢氏の文章中の「伊藤」の行
>動を、唐沢氏の文章に従って見てみても、たかだか、唐沢氏や岡田氏の運営している
>「オタクアミーゴス会議室」での発言や、個人的に唐沢氏に送ったメール(私信の公開
>である!)などが問題にされているだけである。
> それらに対する唐沢氏の解釈や分析にも、論理的にかなりおかしな点があるのだ
>が、それらについての具体的な検証は、後に別の場所で行うこととする。

> ここで問題にしたいのは、唐沢氏が引用(どういう訳か、一部を変形した上で引用して
>いる)している伊藤の発言等が、どうも上の四項目にあてはまらないということである。 

>当人である僕自身の言うことなので、すぐには信用していただけないかもしれない。
>しかし、少なくとも「自我のみを守ろうとし、それを侵そうとするものにエキセントリックな
>罵声を浴びせかける」ような発言は引用されていないのは、誰の目にも明白なことだ。
>それは、唐沢氏の原稿を読めばわかる。
〈略〉
> さらに言えば、唐沢氏が、僕に対しての誹謗中傷行為だけでなく、竹熊健太郎氏や
>東 浩紀氏、いしかわじゅん氏や、夏目房之介氏などに対して、揶揄的なことを書き続
>けてい ることなどを考えると、「エキセントリックな罵声を浴びせる者」とは、実は唐沢
>氏自身のこ とではないだろうか? という疑問が生じる。


2ちゃんねるのスレにも書いたけど、「『エキセントリックな罵声を浴びせる者』とは、実は
唐沢氏自身」には大賛成としか。

追記: 「スモールサークルまたは破壊的カルトからの生還」に続く。

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00:26  |  資料編 (14) +  |  TB(0)  |  CM(3)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

>伊藤 剛さん
>今後もときどきコメント欄をお借りしてもよいでしょうか?

ガンガンやってくださって、かまいません。長文になろうが、レス数が多くなろうが、遠慮はいりませんということで。

逆に、精神的にキツくなったので勘弁して欲しいということになれば、削除や改変 (特定の箇所を伏せ字に切り替えるなど) その他の要望をお出しください。メールは公開していません (これは私の処理能力の問題) が、「管理者だけに表示 (非公開コメント投稿可能)」の機能があるので、公開するには微妙な問題の話にもある程度対応できるかなと思っています。


で、「キャッチセールスにわざとつかまり」の方は、話を聞いただけならアリかなと個人的には思いますが、「OLD PINKお見合いオフ事件」は確かにアレですね。といっても、私は断片的な情報でしかしらないわけですが。

一人を集団でイジメ倒すというだけで「シャレにならない」感はあるのですが、さらに、

http://pc11.2ch.net/test/read.cgi/nifty/1044501963/l50
>477/999 HHC02475 OLD PINK 謹んで受けさせていただきます
> ( 3) 97/05/29 14:37 448へのコメント コメント数:2
〈略〉
>しかし私は所詮、(株)オタキングに捕らわれたカゴ の鳥です。決定権は
>岡田議長の手にあります。

と、パワハラ的な要素もありそうで、「シャレにならない」感はますます強く……。
トンデモない一行知識 |  2009年08月08日(土) 12:25 |  URL |  【コメント編集】

×起業
○企業

ですね。訂正します。
伊藤 剛 |  2009年08月07日(金) 07:59 |  URL |  【コメント編集】

当事者です。
出勤前に読んだらたいへんなものがアップされていました。。。

とりあえずひとつだけ。
(C)の文章ですが、これはおそらく全く変更を被っていない、私の文章ですね。

オタクアミーゴスのこうした雰囲気に辟易したのは、この直前にあの悪名高い「OLD PINKお見合いオフ事件」があり、そこに参加した人が「あんなに面白い見世物はない」などと発言したことが直接の原因です。
それから、ほぼ同じ時期だったと記憶していますが、ショッピングモールか何かの宝石店(だったかどうか? 少々あやふやです)のキャッチセールスにわざとつかまり、二時間もの間、からかいながら店員に話をさせたあげく、ああ面白かったという調子でそのさまを報告する人がいたことなども印象に残っています。
いまからニフティの過去ログを入手するのは困難かもしれませんが、オタクアミーゴス会議室については、背後に大日本印刷などの起業がついた企画があり、そのマーケティング的な草刈り場として運営されているのだという説明を唐沢氏からはされていました。
(昨年、岡田氏に問うたところ、あまり正確な説明ではなかったようです)

とりあえずこんなところで。
今後もときどきコメント欄をお借りしてもよいでしょうか?
あまり自分のブログではやりたくない話題なので。

すいませんが、よろしくお願いします。
(次に現れるのは来週なかば以降になります。ご容赦)
伊藤 剛 |  2009年08月07日(金) 07:50 |  URL |  【コメント編集】

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