fc2ブログ
2011年12月 / 11月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫01月

2011.12.31 (Sat)

身長に身長を重ねて語る試み

http://www.tobunken.com/news/news20111230150540.html

日本の思想家というのは、例えば小林秀雄などが典型だろうが、
小柄で痩躯、考える機械的な存在で、性や食といった肉体的欲求
からは解脱した、という外観(内面がどうなのかは知らない)を
持つというイメージがこの時代、常であった。

http://megalodon.jp/2011-1230-2326-16/www.tobunken.com/news/news20111230150540.html

2ちゃんねるのスレには、「小林秀雄って美食家だし長谷川泰子寝取るし、外に出てる
部分だけで充分肉体的欲求まみれだと思うんだが…」 (Read More 参照) と書き込んで
いる人がいた。

それもそうだし、個人的には小林秀雄が「小柄」とか書かれているのにも驚いて、これは
自分が何か勘違いしているのかと、あわててググってみたりした。

https://twitter.com/#!/mn725/status/16535321604784128
>@mn725
>なつお
>小林秀雄は高学歴高身長高収入の3Kイケメンなので人気があるのは当然だな
>20 Dec 10 via web


やっぱり小林秀雄って高身長のイメージだよねえ、と。唐沢俊一は三島由紀夫あたりと
混同しているのだろうか (以下は「小林秀雄 身長」でググると上位にくるページ)。

http://blogs.yahoo.co.jp/eraser1eraser/60191522.html
> -三島由紀夫は評論が素晴らしいと思う。小林秀雄よりも23年遅れて生まれたこの男
>は、
> о1902年に生まれていたら、どんな人生を歩んだであろうか?
> -だが、この男は163センチの虚弱な小男に過ぎなかった。陸士・陸大には耐えられ
>なかったであろう。三島由紀夫がどうしても欲しかったものは多分、
> о知性など要らぬから強靭なる肉体&高身長
> -だったに違いなかった。


または、まさかと思うが、以下のような2ちゃんねるの書き込みを唐沢俊一は信じたとか
(これも「小林秀雄 身長」でググると上位にくる)。

http://mimizun.com/log/2ch/book/1069048237/
>34 :吾輩は名無しである:04/01/09 23:10
>小林秀雄は145cmだっけ?


そこまでの「小柄」というのは、小林秀雄ではなくて、長谷川泰子 (「グレタ・ガルボに似た
女性」) を小林秀雄と取り合った中原中也の方だよなあ……と。

http://ohisamanokakerat-t.at.webry.info/200707/article_8.html
>中原中也は、盆地-山口市(人口約15万人)-にある湯田(ユダ)温泉で
>1907(明治40)年に産まれました。
>成人時の身長は四尺六寸五分(約141㎝)でした。
>体重は、標準で約43.73㎏です-推定。
>1923(大正12)年9月1日に関東大震災は発生しました。
>小林秀雄は、リュックを逆さまに背負いおふくろさんを探し回りました。
>1925(大正14)年に、地方出身者の中也は、同棲していた長谷川泰子
>と京都から上京し、江戸っ子-東京市神田区(現東京都千代田区)出身
>-で長身でやせ型の小林秀雄と知り合いましまた。
>中也18歳、泰子21歳、小林23歳のときでした。
>その年の11月末、 中也は泰子から捨てられました。
>別離の当日、小林が関東大震災のとき使用したであろうリヤカーで、
>荷物を運び出す泰子を静かに中也は見送りました。
>『・・・・私はただもう口惜しかった、私は<口惜しき人>であった』
>小雪がちらついていたのかも知れません。
>泰子は、友人小林のもとへ去ったのでした。
>奇怪な三角形-小林記-は成立しました。
〈略〉
>※1
>小林秀雄の身長体重は不明です。
>推測では、165~175㎝で、当時としては長身やせ型の部類だと思います。
>標準体重では、59~67㎏となります。
>女優長谷川泰子の身長体重も不明です。
>推測では、165~170㎝だと思います。
>泰子は、小林と離別後、「グレタ・ガルボに似た女性」で松竹キネマに一等
>当選しているので、女性としては大柄だったと思います。
>この手の記録がないというのが、この列島の特徴でもあります。
>中也に身長の記録があるのは特別なことです。


上に引用した人の書いている通り、「この手の記録がない」というのは、ある。中也の身長
だって、下に引用した人のように「150cm位」という人もいるし。自分の記憶していたのは、
こちらが近い。

http://lookyamaguchi.blog70.fc2.com/blog-entry-361.html
>中也の結婚式が行われた山口市湯田温泉西村屋で撮影された写真。
>実は、中也は、身長が150cm位と小柄であり、
>妻の孝子さんは、座っての写真撮影であったこと。


その他参考
- http://www.chuyakan.jp/01chuya/01main1.html
- http://plaza.rakuten.co.jp/pess5547/diary/200803200000/

しかし、中也と泰子と小林の三角関係は漫画化もされていて、ビジュアルを思い浮かべ
やすい珍しいケースではないかと思ったら……。

http://blogs.yahoo.co.jp/orchestraofangels/58985437.html
>ってことで、曽根富美子の「含羞 我が友中原中也」を紹介♪
>…………。
>                           …絶版じゃん。(号泣)


Amazon の中古本では買えるけど安くなかったりするし。あらら。

- http://www.amazon.co.jp/dp/4061027247
- http://www.amazon.co.jp/dp/4061027255

で、まあ、「この時代、常であった」といわれても……「小柄で痩躯」や、「性や食といった
肉体的欲求からは解脱」というイメージを、そもそも唐沢俊一がどこから引っ張ってきたの
かさえも、結局謎のままである。

実際の身長や体重なんかわからないよ、というのなら、漠然と中肉中背の体型を思い浮
かべるのが普通じゃないかと思うし、三島や中也あたりと混同していたと仮定するなら、
「性や食といった肉体的欲求からは解脱」なんて方向には連想がいかないだろうという
気がするし。三島は同性愛だとか (ここを参照)、芥川は「妻子ある女性との不倫」 (原文
ママ、ここを参照) とか、そういう話が大好きなのが唐沢俊一なのだから。

いや唐沢俊一がいっているのは「日本の思想家」であって、文学者とは別系統――と思お
うにも、「小林秀雄などが典型」と書いているその小林秀雄は、批評家とか文芸評論家に
通常は分類される人であるし。

http://ja.wikipedia.org/wiki/小林秀雄_(批評家)
>小林 秀雄(こばやし ひでお、1902年(明治35年)4月11日[1] - 1983年(昭和58年)
>3月1日)は、日本の文芸評論家。
>日本の近代批評の確立者であり、西田幾多郎と並んで戦前の日本の知性を代表する
>巨人であり、戦後も保守文化人の代表者であった。いわゆるフランス象徴派の詩人、
>ドストエフスキー、志賀直哉らの文学、ベルクソンやアランの思想に大きな影響を受け
>る。本居宣長の著作など近代以前の日本文学にも深い造詣と鑑識眼を持っていた。


ちなみに、クリスチャンの狐狸庵先生はどうかとも思ったが、遠藤周作も「痩身長躯すらり
とした体つき」だったとか。

http://ja.wikipedia.org/wiki/遠藤周作
>狐狸庵先生などと称される愉快で小仙人的な世間一般の持つ印象とは異なり、実物
>の遠藤周作は、おしゃれで痩身長躯すらりとした体つき(戦後間もない時代に176cm
>前後)の作家であり、豪放磊落開放的な態度で一般とも接するのを常としていた。


考えてみれば、唐沢俊一のいう「この時代」の文化人って裕福な家庭の子が多く、「小柄
で痩躯」どころか、同時代人の中では恵まれた身長の者が多かったという可能性も。

「性や食といった肉体的欲求からは解脱」というイメージだったら、西田幾多郎あたりは
どうかとも思ったんだけど、彼の父親と同じだったら「身長通常」といったところか。

http://www.ritsumeihuman.com/publication/files/ningen_5/013-22.pdf
>父について,幾多郎は,西田家に伝えられている『過去帳』の中で,次のように書いて
>いる,「父,名ハ,得登,幼名ハ藤蔵,祖父新登アラノリノ末子,天保5年4月生。明治
>31 年10 月9日,余,山口高等学校ニ在職中,肺炎ヲ病ミテ金沢市竪町ノ家ニ没ス。
>享年65。父,身長通常,背稍ヤヤカガミ,眼鋭ク鼻高シ,性淡泊ニテ,雷雨一過痕ヲト
>ドメザルノ風アリ。思ヒタチシ程ノ事,貫カザレバ止メズ。深ク意ヲ我等ノ教育ニ用ユ。
>我等今日アルハ一ニ父母ノ力ニヨルト言フベシ」と。ここに「金沢市竪町ノ家」とあるの
>は,父の妾宅のことである。


その他参考 URL:
- http://www.nishidatetsugakukan.org/


スポンサーサイト



テーマ : 感想 - ジャンル : 本・雑誌

11:21  |  その他の雑学本 間違い探し編 (324) +  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
 | BLOGTOP |  NEXT