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2009.08.30 (Sun)

そんなゴキブリレストラン、いろんなゴキがもがいてる

『トンデモ一行知識の世界』 P.63

 ……では最後にゴキブリにまつわる歴史のエピソードを。かのロシアの
ピョートル大帝は、ゴキブリが大のニガテであった。ゴキブリを見ると蒼く
なったので、宮廷の内部はもちろん、いきつけのレストランなどでも、ゴキ
ブリが出たとたん悲鳴をあげた。そこへ
「そんなことでしたら私どものレストランを王室御用達にしていただけません
か。何しろゴキブリが出てきたこともないのが自慢なんで」
 というレストランが現れた。そこで大帝がそこのレストランに行ってみると、
なるほどゴキブリの影も形もない。すっかりうれしくなって大帝が
「すばらしい! これには何か秘密があるのかね?」
 と訊ねると、支配人が
「はい、実は先祖代々伝わるゴキブリよけのまじないがあるのでございます」
 と言う。大喜びした大帝がそれをぜひ、教えてもらいたいと所望すると、
「お安い御用でございます。それ、一匹をああしておけば、ほかの連中は
絶対にその店に近づかないので:
 ……支配人が指さす方を見たとたん、大帝は悲鳴をあげて店を飛び出し
た。そこには、壁の真ん中に、特別に大きな一匹がピンでとめられ、足を
バタバタ動かしてもがいていた。


「壁の真ん中に、特別に大きな一匹がピンでとめられ」ているのに、「何しろゴキブリが
出てきたこともないのが自慢」というのは何か詐欺だし、「そこのレストランに行ってみる
と、なるほどゴキブリの影も形もない」って、どこに目がついているのかと。

そもそも、捕えた一匹がジタバタ暴れていたら他のゴキブリは近づかない――なんてこと
があり得るなら、ゴキブリホイホイのような商品は成立しないはずという問題もある。

で、「歴史のエピソード」というが、「ピョートル大帝は、ゴキブリが大のニガテ」自体が、
ほとんど見あたらなく、以下のようなことが書いてあるのは珍しい。

http://wiki.chakuriki.net/index.php/ロマノフ朝
>ピョートル1世
〈略〉
>04. ゴキブリが大の苦手(実話)


日本語のページには少なくても、「Pyotr Alekseevich cockroach」あたりでググれば、
英文のページはヒットするかなと思ったけど、これといったのが見あたらないのが少々
意外だった。レストランのエピソードは嘘っぽいとして、ピョートル大帝がゴキブリ嫌い
という資料くらいは、どこかに流通しているものと予想していたんだけど……。

http://ja.wikipedia.org/wiki/ピョートル1世
>ピョートル1世(〈略〉ラテン文字表記の例:Pyotr I Alekseevich, 1671年6月9日 - 1725
>年2月8日)は、ロマノフ朝第5代のツァーリ(在位:1682年 - 1725年)、初代のロシア
>皇帝(インペラトール / 在位:1721年 - 1725年)。


ピョートルはあきらめて、「ゴキブリ レストラン ピン」や「cockroach restaurant pin」で
検索しても、殺虫剤だの、Cockroach restaurant とは English restaurant の意味だの
(←ひどい)、ゴキブリのブローチがあるだの (←今は売ってないような) だの、関係の
ない話ばかりがくる。何かの伝承かジョークを唐沢俊一が「歴史的なエピソード」と取り
違えたという線も薄いみたい。いくらネット上にすべてがあるとは限らないといっても、
元ネタがあるなら、かするような話が少しはあってもよいはず――ということで。

http://codawari.info/health/otaku/archives/2008/05/post_442.html
>“グルメなゴキブリを徹底研究“と銘打たれ、ナイフとフォークが描かれたパッケージが
>印象的な「ゴキブリレストラン」 (アース製薬)“ゴキブリ好みの7種の極上ブレンド”を
>うたう「ホウ酸ダンゴ プレミアム」(フマキラー)……。いったい、殺虫剤業界に何が起
>こっているのだろうか。


http://cockroachjokes.wordpress.com/
> All English jokes are called, Cockroach jokes, because the English people are
> called, Shakespeare cockroaches.
〈略〉
> Cockroach Joke
> 19A man went to a Cockroach restaurant (English restaurant) and ordered food.
> After waiting for half an hour, he aksed the English waiter, “When would you
> prepare my food. I have been waiting for half an hour” ? The Shakespeare
> cockroach waiter replied, “We prepared the food last month and we are now
> heating it up for you”.


http://pinfeatherscom.blogspot.com/2009/07/cockroach-will-live-nine-days-without.html
> A cockroach will live nine days without its head before it starves to death

その他参考 URL (ゴキブリブローチ):
- http://mappingthemarvellous.wordpress.com/2007/06/13/roach-brooch/
- http://www.roachbrooch.com/


追記: コメント欄で教わった、薄田泣菫『茶話』の岩波文庫版を入手。この本の P.13 に
『油虫嫌いの皇帝』という話があるのだが……これが元ネタだとすると、唐沢俊一は何を
考えて、こんなに劣化させた話に仕立て上げたのか、謎が深まるばかりというか。

・『油虫嫌いの皇帝』に登場する「ピイタア大帝」は、「油虫」 (「虫のなかでも一番いやな
 奴」とも書いてあるので、多分ゴキブリのこと) が「嫌い」ではあるが、唐沢俊一のいう
 「ゴキブリが出たとたん悲鳴をあげた」なんてことは全然書かれていない。

 「ゴキブリを見ると蒼くなった」はまあ、『油虫嫌いの皇帝』の中の「大帝の顔は菜っ葉
 のように青くなった」をさしているのかもしれないけど、この青くなった理由は、どこまで
 「ゴキブリがニガテ」なせいか、それとも怒りで顔面蒼白になったと解釈すべきか微妙。

・『油虫嫌いの皇帝』の話の舞台は、大帝の「お気に入りの家来の別荘」であって、
 レストランではない。当然、唐沢俊一の書いているような「私どものレストランを王室
 御用達にしていただけませんか」といった売り込み文句なんてものなど出てこない。

・唐沢俊一が書いているように、大帝が「すばらしい! これには何か秘密があるのか
 ね?」とは、『油虫嫌いの皇帝』の中の大帝は、訊ねたりしない。

 こちらの大帝は、「他の家へ入る時には室をきれいに掃除させた上で、『御覧の通り
 油虫は一匹も居りませんでございます。』という家来の保証がなかったら、夢にも閾を
 またごうとはしなかった」。「これには何か秘密が」うんぬんは、入る部屋入る部屋で、
 毎回のようにゴキブリに遭遇する人間の発する質問である。

 『油虫嫌いの皇帝』では、別荘の持ち主の家来に、「この別荘には無論油虫など居る
 はずはなかろうね。」、「ほんとうに一匹も居なかろうな。」としつこく確認しているのだ。

・家来は大帝に、「よしんば居りましたところで、決してお目通りへ出てくるようなことは
 ございません。御覧遊ばせ。あれ、あのように生きた奴を一匹針で壁にとめて虫よけ
 の蠱いが致してございますから。」と答える。

 唐沢俊一の書いた「先祖代々伝わるゴキブリよけのまじない」は、どこにも出てこない。
 「留め針で刺された油虫」は、「特別に大きな一匹」だったとも書かれていない。
 油虫が「ぴくぴく手足を動かせていた」というのが、唐沢俊一にかかると「足をバタバタ
 動かしてもがいていた」という記述になってしまうらしい。

 また、油虫が針で刺されていた場所は、『油虫嫌いの皇帝』では、「主人の指ざす方へ
 眼をやると、それはちょうど自分の頭の上で」とか書いてあるので、唐沢俊一のいう
 「壁の真ん中」ではなく、壁の上方、天井近くで、部屋に入り食事をしているときには
 死角となっていた位置かと思われる。

・そして『油虫嫌いの皇帝』の大帝は、「悲鳴をあげて店を飛び出し」たりはしない。
 「いきなり主人の頭に拳骨を一つ喰らわして、そのまま外へ飛び出した」のだそうだ。

 「あとに残された主人は壁の油虫のように椅子の上でやたらに手足をもがいていた。」
 とのこと。前述の「足をバタバタ動かしてもがいていた」の記述は、ここからとったのか。

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